山本由伸が崩れた1球「狂っていった」 大乱調の引き金になった3球三振の“落とし穴”
エースの山本が自己ワーストタイの6回途中7失点KO
■阪神 8ー0 オリックス(28日・京セラドーム)
オリックスは28日、京セラドームで行われた阪神との「SMBC日本シリーズ2023」第1戦に0-8で敗れた。先発したエースの山本由伸投手が、猛虎打線につかまり6回途中10安打7失点でまさかのKO。野球評論家の新井宏昌氏は「3球三振に仕留めた後の渡邉に対する攻め」と勝敗を分けたポイントを挙げた。
3年連続「投手4冠」の絶対的エースが、イニング途中でマウンドを降りることになった。4回まで無失点の好投を見せていたが、5回に悪夢が待っていた。先頭の佐藤輝に中前打を浴び二盗を許すと、1死三塁となり渡邉に中前への適時打で先制を許す。さらに2死一、二塁から近本に右中間へ2点適時三塁打、中野に左前適時打を浴び一挙4点を失った。
6回にも先頭の大山に四球を与えるなど2死一、三塁とし、木浪に左前適時打、坂本にも適時二塁打を浴びて、6点を失ったところで降板となった。
相手先発は村上頌樹投手と、両チームのエースが激突した第1戦は予想だにしない結末。自己ワーストタイ7失点と乱調の右腕に新井氏は「直球はシュート回転し、ボールが高く浮く場面もあり本来の投球ではなかった。カーブが決まらないためにフォークに頼る配球になってしまいました」と分析した。
ゲームが動いた5回。佐藤輝の「初球・二盗」が注目を浴びたが、新井氏は先制適時打を放った渡邉の打席で見せたバッテリーの“動き”に着目した。
短期決戦で好調の杉本がベンチ外、高卒2年目の池田を1番に抜擢も「少し荷が重い」
オリックスバッテリーは渡邉に対し、3回の第1打席では3球三振に仕留めた。カットボールを2球続け、最後はフォークで空振り三振。だが、5回の第2打席では初球に155キロの速球系のボールを詰まりながらも中前に落とされた。内野手は前進守備。三振か、事が起きないゴロを打たせたい場面だったともいえる。
「この試合では、阪神がDHに誰を使うかに注目していました。パ・リーグ時代から直球に強い渡邉。第1打席を見ると変化球で十分仕留められる内容だったが、オリックスバッテリーは速球系の球種を選択した。詰まらせることはできたが、逆にそれが裏目に出た。岡田監督からしたら『しめしめ』といったところでしょうか。得点圏に走者を背負っても点はやらないのが山本。あの1打席、1点から調子は狂っていったように見えます」
今季、山本は16勝(6敗)、169奪三振、防御率1.21、勝率.727と圧倒的な成績。そんな“最強右腕”だが、日本シリーズでは白星を挙げていない。この試合を含め計4試合に登板しているが0勝2敗。2021年は第1戦で6回1失点、第6戦では9回1失点ながら勝敗つかず。昨年は第1戦で左脇腹を痛め5回途中4失点で降板していた。
「本人も勝っていないことは分かっている。CSに続いて力みが出たのではないでしょうか。試合展開にもよりますが、これで第6戦に投げることになる。日本で最後の登板になる可能性もあり、やり返す投球を期待したい」
打線も村上の前に7回で散発2安打の無得点。左足首を痛めベンチを外れた杉本の代役に、今季12試合出場の高卒2年目・池田を1番に起用するなど、理想のオーダーはほど遠い。「スタメンを見ても苦しい。短期決戦で力を発揮する杉本が出場できるか。池田には荷が重かった。得点を挙げるに“人材不足”は否めない」。絶対的エースで初戦を落としたオリックス。日本一連覇に向け、中嶋監督の采配がカギを握りそうだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)