甘い球を「ファウルにしかできない」 阪神“村上の10球”に見えたオリの泣き所

オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】
オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】

5回に先頭の佐藤輝が中前打で出塁すると、ノイジーの打席で初球にスタートを切り二盗に成功

■阪神 8ー0 オリックス(28日・京セラドーム)

 阪神は28日、京セラドームで開幕したオリックスとの「SMBC日本シリーズ2023」第1戦に8-0で勝利した。相手エース・山本を攻略し計13安打8得点の快勝劇。攻守で完璧な試合運びを見せた岡田阪神に野球評論家の新井宏昌氏は「初回に防がれた機動力を使い続けた。シーズン通りのリズムで野球をした阪神に軍配が上がった」と分析した。

 中嶋マジックのお株を奪う岡田采配だった。試合が動いたのは5回。先頭の佐藤輝が中前打を放つと、続くノイジーの打席では初球でスタートを切り二盗に成功。1死三塁となり渡辺諒の中前適時打、さらに2死一、二塁から近本が右中間へ2点適時三塁打、中野の左前適時打で一挙4点を奪った。

 攻撃の手を休めることなく6回も2死一、三塁から木浪の左前適時打が飛び出すなど、3年連続「投手4冠」の山本から7点を奪い、マウンドから引きずり下ろした。球場の空気が一変した佐藤輝の二盗だが、新井氏は「初球からスタートを切れたことは素晴らしいが奇襲ではない」と口にする。

 佐藤輝はシーズンで7盗塁をマークしており、決して足の遅い選手ではない。チームとしても初回に三振ゲッツーに終わったが、中野にスタートを切らせるなどベンチは積極的に動いた。

 山本は今季から左足を高く上げない“すり足”のフォームに変更。一見、クイック気味に見えるが「足の動きは早いが、手はいったん離れ間ができる」と指摘。難攻不落と言われる最強バッテリーの心理を逆手にとり、わずかな隙にも阪神ベンチは見逃さなかった。

阪神・村上頌樹【写真:荒川祐史】
阪神・村上頌樹【写真:荒川祐史】

5回1死一、二塁で粘るゴンザレスを打ち取った“村上の10球”

 投げても今季ブレークした村上が7回2安打無失点の快投。5回は1死一、二塁のピンチを背負ったがゴンザレスを二飛、若月を三ゴロに抑え無失点で切り抜けた。ゴンザレスに対してはカウント1-1から7球粘られるも、最後は151キロの内角直球で詰まらせた。

 得点を奪った直後のピンチで披露した“村上の10球”に新井氏は「根負けすることなく、最後は素晴らしい球でアウトを奪った」としながらも「阪神バッテリーは打球をフェアグラウンドに入れて勝負したい。それを打者がファウルにしかできない。甘いフォークも何球かあった」。シーズン打率.217、CSでも13打数1安打と調子の上がらないゴンザレスには荷が重かったと見ている。

 エース・山本を相手に初戦を勝ち取った意味は大きい。阪神のオーダーはDH制があるため「7番・渡邊」以外はシーズン、CSと同じ並び。近本、中野の1、2番コンビが共に3安打を放ち、CSでMVPの木浪も2安打と岡田監督が口にする“普段通り”の試合運びとなった。

「山本から大量得点を奪い、3四球を奪った大山以外のスタメンにヒットも出た。相手投手が変わっていくが選手の力みは消えた。公言通りにシーズンと同じ戦いができた阪神は勢いに乗れる。前回の日本シリーズでは1勝もできなかった岡田監督も一安心でしょう」

 敵地で掴んだ大きな1勝。1985年以来、2度目の日本一に向け岡田阪神が最高のスタートを切った。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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