“劇場型セーブ”も「100点の投球」 専門家が絶賛したバッテリーの視野の広さ

オリックス・平野佳寿【写真:荒川祐史】
オリックス・平野佳寿【写真:荒川祐史】

先取点を許すも5回に一挙3点を奪い逆転、1点リードの9回は守護神・平野佳が締める

■オリックス 5ー4 阪神(10月31日・甲子園)

 オリックスは31日、甲子園で行われた阪神との「SMBC日本シリーズ2023」第3戦に5-4で勝利し、対戦成績を2勝1敗と白星を先行させた。1点リードの9回は守護神・平野佳がピンチを背負うも無失点。薄氷のセーブとなったが、日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏は「チームに勝ちをつけた100点の投球」と賛辞を送った。

 虎党が9割を占める完全アウェーの甲子園。大歓声が響き渡る中でもベテラン右腕は冷静だった。1点リードの9回。先頭の原口を四球で歩かせ、近本、中野を打ち取るも森下に四球を与え2死一、二塁。サヨナラの走者を背負ったが、最後は大山をフォークで空振り三振に仕留めて試合を締めくくった。

 走者を背負ってからは140キロ前半の直球が140キロ後半にアップし、決定打を許さなかった。39歳7か月のセーブは日本シリーズ最年長記録のおまけつき。SNSなどでは“劇場”と呼ばれることもあるが、痺れる場面でスコアボードに「0」を刻んだ。野口氏は「制球は少しぶれたが、さすがの投球。守護神の仕事は相手より1点少なく帰ってくること。完璧な仕事。投げた平野もリードした若月も冷静で視野が広かった」と称えた。

 大山との勝負は見ごたえ十分だった。投じた全6球中4球がストレート。一発長打もありがならリーグ最多の99四球、最高出塁率(.403)のタイトルを手にしたスラッガーが相手。野口氏は最大の武器であるフォークを使うタイミングが絶妙だったという。

中嶋監督が見せた“普段通り”の采配「カウント的にも間違いなく考えられる作戦」

 初球の直球は高めに浮いたが、その後は低めの直球、フォークでファウルを奪って追い込んだ。その後は2球続けて低めの際どい直球を見極められてフルカウントになるも、最後はストライクからボールゾーンに落ちるフォークで仕留めた。

「大山は低めのボールを振ってくれない。だが、若月としては振ってくれるタイミングに持っていけばいいと割り切れた。まずは真っすぐで行き、フォークでファウル。ストレートもういっちょうでフルカウントになったが、振りやすいシチュエーションに持って行ったことでバッテリーの勝機が高まった」

 攻撃面では中嶋監督の“普段通り”の采配が決まった。同点の5回。無死一塁では若月にカウント2-0からエンドランを指示。一、三塁と好機を広げ、一挙3得点のビッグイニングに繋げた。「DH制がなく9番・東の打順をどうやって迎えるか。カウント的にも間違いなく考えられる作戦。中嶋監督の采配も見事だが、それを遂行した選手も素晴らしい」と野口氏は語った。

 ここまで日本シリーズ無安打だった宗にも貴重な2点タイムリーが飛び出し、4番に昇格した頓宮には両チーム通じて初本塁打と、打線も上向きだ。3年連続で日本シリーズを経験しているオリックスには、完全アウェーの甲子園の大歓声も関係ない。1日の第4戦は、打撃も得意の山崎福に先発を託し、日本一連覇へ王手をかける。

【動画】なびく長髪…フォームはそのまま 若かりし頃の平野佳寿

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