球場の雰囲気を一変させた岡田采配「やはり策士」 劇的勝利の伏線…阪神OBも驚いた一手

阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】
阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】

阪神は同点の9回に2死満塁から4番・大山が左前へサヨナラを放つ

 阪神は1日、甲子園で行われたオリックスとの「SMBC日本シリーズ2023」第4戦を4-3で勝利し、対戦成績を2勝2敗の五分とした。岡田監督が見せた執念の采配、最後は4番・大山が劇的なサヨナラ打。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏は「岡田監督にしかできない継投。やはり策士」と分析した。

 岡田監督が動いたのは7回の守備だった。先頭・廣岡のゴロを三塁手・佐藤輝が失策。その後、代打・セデーニョの中前打と犠打で1死二、三塁となり、宗に中前2点適時打を浴び同点に。ここで佐藤輝に代わって投手に石井を投入し、三塁には糸原を起用した。

 打撃でも3打席連続三振、前日10月31日の第3戦から4打席連続三振と苦戦が続いていた大砲。野口氏は「あの場面は石井をすぐに変えることはできない。次の打席を考えれば佐藤輝しかいなかった。エラーも絡み打撃内容も悪かった」と指摘。短期決戦だからこそ、迷いのない采配が求められる場面だった。

 だが、これだけでは終わらない。8回に石井が1死一、三塁のピンチを背負うと、オリックスベンチは代打・T-岡田を起用。ここで阪神ベンチは左腕・島本を投入。代打の代打・安達を三ゴロに仕留めると、続く中川圭の打席では、この日ベンチ入りした湯浅を起用。“元守護神”は149キロの直球で二飛に仕留めた。執念の継投が実り無失点で抑えた。

阪神・湯浅京己【写真:中戸川知世】
阪神・湯浅京己【写真:中戸川知世】

湯浅の起用に「誰も想像できないし、岡田監督にしか分からない」

 絶対に1点も失うわけにはいかない場面。左脇腹筋挫傷を乗り越え、約4か月半ぶりの1軍登板になる右腕を起用する大胆な“岡田采配”に、野口氏も驚きを隠せなかった。

「打席には直前にエラーした中川で必死にくる。完全に流れはオリックス。あそこは球場の雰囲気を変えないといけない。それができるのは岩崎か湯浅。今日初めてベンチ入りさせ、投げるシチュエーションが来る。誰も想像できないし、岡田監督にしか分からない。フェニックスリーグの登板も見て、使えると判断している。やはり策士。この日は継投策で阪神に軍配が上がった」

 試合を決めたのは4番・大山。9回1死三塁から中野と森下が敬遠され1死満塁。フルカウントからの7球目、148キロの直球を振り抜くと、打球は三遊間を抜けて劇的なサヨナラ打となった。制球の定まらないワゲスパックを相手に初球、2球目と際どいボールを選んだ時点で、勝負は決まったという。

「これまでの打席では焦りもあった。ただ、レギュラーシーズンでやってきたことが最後の打席に詰まっていた。早いカウントからボール球に手を出さない。有利なカウントにして打っていく。相手投手の状態も把握し、有利な状況で打席に入れていました。これも4番の宿命ですが、最高の場面で打破した。明日以降はもっと楽な形で打席に入れるでしょう」

 本拠地・甲子園で待望の白星。それも劇的な幕切れでタイに持ち込んだ。「第5戦は佐藤輝の起用法にも注目です。レギュラーシーズンなら見返すチャンスを与えますが、日本シリーズでは“温情”をかける必要もない。勢いは完全に阪神と言っていいでしょう」。2日の第5戦が甲子園ラストゲーム。猛虎が全力で王手をかけにいく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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