“中1日”で偉業「信じられない」 専門家も驚愕、7失点KOから修正した最強エースの凄み

オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】
オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】

第1戦で7失点KOのエース・山本が1失点完投、日本S新記録の1試合14奪三振でリベンジ

■オリックス 5ー1 阪神(4日・京セラドーム)

 オリックスは4日、京セラドームで行われた阪神との「SMBC日本シリーズ2023」第6戦に5-1で勝利し、対戦成績を3勝3敗の五分に戻した。第1戦でKOされたエース・山本が1失点完投、日本シリーズ最多の14奪三振でリベンジに成功。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏は「実質“中1日”での快投は信じられない」と賛辞を送った。

 絶対的エースが意地の投球で日本シリーズ初勝利を手にした。2回1死走者なしからノイジーにソロを浴び先取点を許したが、その後は粘りの投球で猛虎打線を封じた。4回は1死一、三塁のピンチを背負うも坂本を空振り三振、近本の大飛球を右翼手・森がジャンピングキャッチの好捕で無失点。7回も2死一、二塁で森下を二飛に仕留め7回を1失点でまとめた。

 走者を背負いながらも要所でフォーク、カットボール、カーブが冴え渡り、終わってみれば14奪三振の快投。野口氏は「目に見えて良かったのはカーブが使えたこと。調整して課題を潰してきた。山本の場合はカーブも優先度の低い球ではない。勝負球としても使えて緩急もつき、幅が広がった」と称えた。

 第1戦ではカーブでストライクが取れず、苦しんだ。野口氏もカーブの重要性を口にする。ヤクルト現役時代に故・野村監督から「力み倒す投手は、無駄な力が抜けるカーブを使え」と何度も言われたという。この日、山本が投じた138球中、カーブは23球。投球フォームのバランスを整え、直球やフォークの速球系とは別の「抜きどころ」も加わったことで、本来の投球を取り戻せたと見ている。

ブルペン待機の第5戦から“中1日”で先発完投「修正能力の高さはさすが」

 もう一方で野口氏が驚いたのは「ある意味、中1日での登板。ここをしっかり調整して完投するんだから凄いところです」と指摘する。山本は2日の第5戦はベンチ入りし、リリーフ待機していた。登板機会はなかったものの、何度かブルペンで投げており中継ぎの“準備”もしていた。

 今オフには、ポスティングシステムでのメジャー挑戦が有力視されており、この日が“ラスト登板”になる可能性も。中嶋監督も試合後に「今日はリミットはないよ。この試合、全部を由伸(山本)にかけました」と、全てを託していたことを明かしている。

 負ければ終わりの大一番。山本は激動の“中1日”で完璧な投球を見せた。野口氏も「リリーフの経験はあるとしても、いつ投げるか分からない状況でスイッチを入れないといけない。この辺りの調整は本当に難しく、先発完投は信じられない。肉体的にも精神的にも切り替える修正能力の高さはさすがでした」と、最強エースの姿に感服していた。

 日本一連覇をかけた第7戦のマウンドには左腕・宮城が上がる。阪神は第6戦で村上、西勇が9回を投げ切り、両チームのブルペン陣には2日の休養が与えられた。総力戦で臨む運命の一戦。「両チームともにレベルの高い投手陣が揃っている。最後の1戦も見応えある試合になることは間違いないでしょう」と野口氏。総スコア「23-23」と全くの五分で迎える“関西ダービー最終戦”から目が離せない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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