練習着の“新人指導者”から再出発 木村文紀氏が熱い視線注ぐ背番号「9」の後継者

西武・西口文也ファーム監督(左)と木村文紀氏【写真:湯浅大】
西武・西口文也ファーム監督(左)と木村文紀氏【写真:湯浅大】

今季限りで現役引退の木村文紀氏は西武で育成担当として新たなスタート

 今季限りで現役を引退した前日本ハムの木村文紀氏が、2007年から2021年シーズン途中まで所属した古巣・西武の育成担当兼人財開発担当に就任。所沢市のCAR3219(カーミニーク)フィールドでの秋季キャンプで、指導者として新たな野球人生のスタートを切った。

 若手野手に熱視線を送り、身振り手振りを交えてアドバイス。時には自ら打球をキャッチし、手本を示す。そのかたわら、空いた時間では鏡の前で素振りをしたり、スタッフを相手にキャッチボールをしたりと体力は現役選手に負けていない。「引退してから1か月半くらい動いていなかったけど、動かそうと思えばまだ動きますね」と自信の笑みを浮かべた。

 指導者としての準備も怠らない。室内練習場の隅で、防護ネットを“相手”に100球ほどノックをする場面も。これまでは受ける側だったが、これからは打つ立場に変わる。「どのノックバットがしっくりくるか試している段階です。とりあえず数を(多く)打たないと。(バットの)長さが全然違うので難しいですね。特に外野には遠くに飛ばさないといけないので。僕も練習です」と真剣な表情で振り込んだ。

背番号「9」の後継者・蛭間を「気にして見ていた。じっくり見て教えていきたい」

 大事にしているのは35歳の自分と選手との“距離感”。「自分は現役上がりたてで、一番選手に近い存在と思っている。僕が経験したこと、教わってきたことを選手目線に立って、分かりやすく伝えようとは心がけてやっています」。ただし、近づき過ぎることはない。「一線は引かないといけない。時には厳しく言わなきゃいけない時もある。そこは割り切ってやっていこうかと思います」。   
 
「全員と接するのが楽しみ」とした上で、気になる存在を挙げる。昨年ドラフト1位で早大から入団し、ルーキーイヤーを終えた蛭間だ。木村氏の日本ハムへのトレード後、2022年は空白だった背番号「9」を受け継いでおり「親近感じゃないけど、僕のあとなのでファイターズに行ってからも結果は気にして見るようにしていました。いいバッターですよね。今後はじっくり見て、教えていきたいです」。高知での秋季キャンプに参加中の“若獅子”への指導は、これからの楽しみのうちの1つでもある。

 選手を教える立場でありながら、肩書きはコーチではないため、練習着でキャンプに参加している。いつかは選手と同じユニホームを着てともに戦いたいという気持ちはあるのか問うと、木村氏は即答した。「もちろんです。やる以上は来年1年間しっかりとコーチ業を学んで、コーチになった時のために頑張ろうと思っています」。力強く言い切った。

○著者プロフィール
湯浅大(ゆあさ・だい)
東京都生まれ。成城高、法大を経て1997年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでサッカー、芸能、野球を担当。主にMLB、DeNA、西武などを取材した。2023年11月からFull-Count編集部に所属。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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