“第2の周東”を「発掘しようとしている」 5試合で犠打ゼロ…鍵を握るスター候補

侍ジャパン・井端弘和監督【写真:荒川祐史】
侍ジャパン・井端弘和監督【写真:荒川祐史】

計5試合で犠打ゼロも「いずれにせよWBCや五輪では送りバントは必ずやる」

 井端弘和新監督が率いる侍ジャパンは18日、「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」(東京ドーム)のオーストラリア戦に10-0で8回コールド勝ち。3戦全勝で予選リーグを1位通過し、19日に大会2連覇を懸けて韓国との決勝に臨む。これまでの戦いぶりから見えてきた井端采配の特徴とは──。

「井端監督自身の現役時代のプレースタイルがそうだっただけに、相手の隙を突き、どんどん足を使った攻撃をしていきたいという意図が見えました」。こう指摘するのは、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏だ。

 象徴的だったのは、17日の韓国戦。両チーム無得点で迎えた3回の攻撃だった。先頭の岡林勇希外野手(中日)が四球で出塁し、続く小園海斗内野手(広島)が左打席に入った。送りバントを命じられてもおかしくない場面だったが、小園はカウント0-1から外角のスライダーを引っ張り、一、二塁間を破る右前打。一塁走者の岡林は一気に三塁を陥れ、無死一、三塁にチャンスを広げた。これがその後、無死満塁から牧秀悟内野手(DeNA)の遊ゴロ併殺打の間に先制点をもぎ取ることにつながった。

 予選リーグ3試合と開幕前の練習試合2試合を合わせた計5試合を通じ、犠打はゼロ。野口氏は「いずれにせよ、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や五輪の大舞台になれば、送りバントは必ずやります。普段日本のプロ野球にいれば、いつでも問題なく対応できるはずです」と断言する。

 その上で「若手中心の今大会では、無理をしてまでバントで送らなくていい。走者が一塁にいる場面では、打者に一、二塁間へ打ってもらい、一、三塁のチャンスをつくるか、最悪でも走者を二塁に進める。その練習を実戦の中でしているのではないか。そこに盗塁も絡めて攻撃を確立していきたいのだと思います。メンバーを見ても、そういう野球をやるための人選をしていますから」と評した。

侍ジャパン・岡林勇希【写真:荒川祐史】
侍ジャパン・岡林勇希【写真:荒川祐史】

ダブルスチール敢行も一塁走者小園が刺された「反応が少し鈍かった」

 一方、18日のオーストラリア戦。1点リードで迎えた3回無死一、二塁の場面で、4番・万波中正外野手(日本ハム)の初球に、二塁走者の岡林と一塁走者の小園がダブルスチールを仕掛けた。岡林は悠々三塁を奪ったが、スタートが遅れた小園は相手捕手の二塁送球に刺されてしまった。

 野口氏は「一塁走者はあの場面では、二塁走者の動きを察知してスタートを切らなければいけませんが、反応が少し鈍かったのが第1の反省点。第2に、あれだけスタートが遅れたからには二塁まで行ってはダメ。刺されるよりは、一、三塁のままの方がいいのですから」と解説した。

 最近の侍ジャパンでは、ここ一番の代走を含めた攻撃のキーマンとして、周東佑京内野手(ソフトバンク)が重宝されている。野口氏は「現時点で周東にかなう選手はいませんが、井端監督は今大会でそういう選手を発掘しようとしているのではないか。小園、岡林、巨人・門脇(誠内野手)、ロッテ・藤原(恭大外野手)には、そういう役割が求められていると思います」と分析する。

 井端監督自身、現役時代には俊足・堅守を誇り、打者としても抜群のバットコントロールで通算1912安打をマーク。厳しい内角球でも右方向へ運べる技術を備えていた。そんなプレースタイルをほうふつさせる野球が、いぶし銀の魅力を放っている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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