妻の妊娠中に戦力外も「困らせたくない」 現役時代から貯蓄に投資…準備した第2の人生

オリックス時代の鈴木優氏【写真:荒川祐史】
オリックス時代の鈴木優氏【写真:荒川祐史】

現役時代からの貯蓄と投資で米国留学…元オリ・鈴木優さんが語る人生計画

 プロ野球の戦力外通告は本人や家族の事情は考慮されず、突然言い渡される。オリックス、巨人でプレーした鈴木優氏は現役時代、2度の戦力外通告を受けた。1度目は結婚式の直前、2度目は妻・美里さんの妊娠中。人生の転機が何度も訪れたが、「お金で困らせたくないですからね」。現役時代から第2の人生の準備をしてきた。

 昨年11月に第1子となる希碧(のあ)くんが誕生。現在は家族3人で語学や憧れていた米国の野球を勉強しながら日々過ごしている。「特に働いているという形ではないです」。現役時代の貯金を切り崩す生活だが、お金や将来への不安はないという。「現役の時から明確にアメリカに行きたいって目標があったので。こういった時に備えてお金の勉強はしてきました」。散財はせず、セカンドキャリアを見据え貯金と投資を行ってきた。

 1度目の戦力外は2021年、プロ初勝利を挙げた翌年のオフだった。結婚式を間近に控えた中、練習試合前のウオーミングアップ中に声がかかった。戦力外を受ける選手は「明日、球団事務所に来てくれ」といった電話が来るとよく言うが、鈴木氏は“前日の予告”すらなかった。

オリックス時代の鈴木優氏【写真:本人提供】
オリックス時代の鈴木優氏【写真:本人提供】

野球選手の「野球しかない」に疑問…「自分の人生なのに無責任ではないか」

 その後、NPB、マイナーリーグも視野に入れながら現役続行の道を模索。戦力外から2か月後の12月に巨人と育成契約を結んだ。1年勝負と心に決めたが、支配下はつかめず。オフに2年連続の戦力外を受けた。その時、美里さんのお腹にはすでに新たな命が宿っていた。悩んだ末、現役引退を決断した。

 プロでの通算成績は27登板で1勝3敗1セーブ2ホールド、防御率7.91。悔しい結果だったのは間違いないが、戦力外をネガティブにとらえていない。「自分には野球しかない」「野球しかやってこなかったから」と言う野球選手もいる。しかし、2022年の現役引退選手の平均年齢は27.8歳、平均在籍期間は7.7年。引退後の人生のほうがよっぽど長い。鈴木氏も8年間の現役生活で様々な“野球人”を見てきた。「(引退後)どうすればいいかわからないって言っちゃう人が無責任に感じてしまったんです。自分の人生なのにそれこそ一番無責任ではないか思うんです」。

 現役時代に第2の人生を考えることは「大事なこと」と鈴木氏は力を込める。「困りたくないですからね。お金に不安がある状況では選択肢がどうしても狭くなってしまう。当然のことですよね」。家族を持ったからこそ、さらに責任は高まる。「家族には環境とかで大変な部分はあると思うんですけど、(お金の不安を)第一に考えなくてもよかった」。

 当初2年間と考えていた留学期間だが、半年で考えも変わってきた。「もっと長く(米国に)いたい気持ちも出てきて」。常に次の人生を自分で決めてきたからこそ、戦力外も前向きにとらえられた。白球とグラブを置き、家族3人で歩み始めた第2の人生。大黒柱としても、迷わず、自らが進みたい道を突き進む。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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