侍20歳はなぜ打たれない? 狙っても「前に飛ばない」、打者制圧する“異質”な武器

侍ジャパンに選出された日本ハム・根本悠楓(左)と阪神・桐敷拓馬【写真:荒川祐史】
侍ジャパンに選出された日本ハム・根本悠楓(左)と阪神・桐敷拓馬【写真:荒川祐史】

日本ハム根本は決勝戦で3回1安打無失点の好救援

「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」の決勝戦が19日に東京ドームで行われ、野球日本代表「侍ジャパン」は韓国に延長10回タイブレークの末、4-3でサヨナラ勝ち。2017年の第1回大会に続く2連覇を達成した。若手だけで臨んだ今大会で、左腕投手が相次ぎ台頭。2024年11月の「WBSCプレミア12」、2026年の次回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向け、フル代表候補に名乗りを上げたのは収穫だった。

 決勝戦で“陰のMVP”級の働きをしたのが、2番手で登板した日本ハム・根本悠楓投手だ。弱冠20歳の左腕は、0-2とリードされた5回から3イニングを投げ、1安打4奪三振無失点の快投。この間に味方打線が同点に追いつき、延長戦へとつながっていった。劣勢だった試合の流れを引き寄せた貢献度は高い。

 根本は16日のチャイニーズ・タイペイ戦でも、3番手で2イニングをパーフェクトに抑えて勝利投手に。今季日本ハムでは、1軍登板5試合の全てが先発で、3勝1敗、防御率2.88だったが、今大会で中継ぎの適性もうかがわせた。

 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「根本の持ち味は、打者が狙っていても前に飛ばないストレートです。決勝戦のMAXは150キロでしたが、打者には多分、スピードガン表示より速く見えていると思います」と評価。「ゆったりとした投球フォームとのギャップが、より打ちにくく見せているのだと思います」と指摘した。

松井裕樹、今永昇太がメジャー移籍なら…“枠”に入り込む余地

 阪神の中継ぎ左腕・桐敷拓馬投手も2試合に登板し、計2イニングを1安打無失点。こちらは日本シリーズでも3試合に登板したとあって、日の丸を背負っても落ち着いたものだった。

 野口氏は「近年は左の好投手もだいぶ増えてきましたが、右に比べるとまだまだ絶対数が少ない。侍ジャパンにも左腕が求められているのは確か」と分析。「根本と桐敷、先発の2人(西武・隅田知一郎投手と楽天・早川隆久投手)はフル代表候補に挙がるでしょう」と数え上げた。

「4人に共通する特長は、右打者を苦にしないこと。内角へのクロスファイヤーと、外角低めへの落ちる球を操れるからです」と野口氏は言う。

 今年3月のWBCでは、侍ジャパンの投手陣15人のうち、楽天・松井裕樹投手、DeNA・今永昇太投手、オリックス・宮城大弥投手、ヤクルト・高橋奎二投手の4人が左腕だった。松井と今永は今オフのメジャー移籍が濃厚で、来年の「プレミア12」には出場できない可能性もある。入り込む余地は大いにあるというわけだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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