緊急事態のオリに「全投手先発準備指令」 由伸、山崎福が抜けても…投手王国へ目論む“秘策”

オリックス・本田仁海(左)と小木田敦也【写真:小林靖】
オリックス・本田仁海(左)と小木田敦也【写真:小林靖】

今オフに山本由伸と山崎福也がチームを離れた

 リーグ4連覇を狙う“投手王国”オリックスは、来季に向けて「秘策」を練っていそうだ。今オフには2人の先発ローテーション投手が抜けることになった。ポスティングシステムを利用し、メジャーに挑戦する山本由伸投手と、国内FA権を行使して日本ハム移籍を決めた山崎福也投手を欠く2024年となる。

 リーグ3連覇を成し遂げた今季、エースの山本が16勝6敗、山崎福は11勝5敗の成績で「16」の貯金を作った。ぶっちぎりで優勝した今季だが、2位のロッテとは15.5ゲーム差だったため、2人の貯金がなければ、また違ったストーリーになっていた可能性はある。

 2人の“穴”を埋めるべく、考えた策は「全投手先発準備指令」だった。厚澤和幸投手コーチは「比嘉さん、平野さん以外は先発要員です。比嘉さんや平野さんは、もうリリーフとしての実績がありますから。(先発の)可能性がないわけではありませんが、リリーフ専門としてリスペクトしていますからね」とハッキリと言うように、来季41歳を迎える比嘉幹貴投手と、守護神の平野佳寿投手の2投手を除く全員に“先発テスト”を課すつもりだ。

 先発投手が2人抜けるとはいえ、厚澤投手コーチの答えは明快だった。「勝ち負けの星勘定は、全く心配していません。それより143試合と(短期決戦の)プラスアルファの試合数を(計算)しなければいけないので、先発をはじめイニングを投げられる人数を確保しなくてはいけません。そこは、腕の見せ所ですよね」。今季は山本がレギュラーシーズンで164回、山崎福が130回1/3を投じ、合わせて300回ほどを補う必要がある。

 今オフの補強では、メジャー通算7勝(3敗)の右腕アンドレス・マチャド投手や、日本ハム在籍時の2022年に51試合(63回1/3)に登板した吉田輝星投手を交換トレードで獲得したが、現有戦力の底上げが基本線。そんな中で、手応えを感じているのが今季最終戦でプロ初勝利を挙げた2022年ドラフト1位の曽谷龍平投手や、齋藤響介投手ら若手の成長だ。

 厚澤投手コーチは曽谷について「最後の試合で勝ち星がついたことで、一皮じゃなく、二皮くらい剥けた感じがしますね」と期待した。新人年の今季は7度目の先発となった10月9日のソフトバンク戦(京セラドーム)でプロ初勝利を挙げた左腕に「真っすぐは元々、速かったのですが、強さが出てきましたね。それに、改良しているカットボールが、打者にとっては厄介なボールになるのではないかという気がしていて、結構、イニングを投げられるかもしれないです」と目をかける。

育成左腕の佐藤一磨に厚澤コーチ「ストレートは1軍レベル」

 さらに、今季は先発1試合、中継ぎで37試合(49回1/3)に登板し4勝、防御率2.19の成績を残した小木田敦也投手らの“適性テスト”も行う可能性がある。厚澤投手コーチは「小木田にしても本田仁海にしても、まだ絶対にリリーフというところではありません。(現状では)使う側のこちらがリリーフとして使っているだけです」。固定概念にとらわれることなく柔軟に個々の可能性を探る。

 また、育成選手ながらも来季1軍戦力として期待がかかるのが、来季5年目を迎える左腕の佐藤一磨投手だ。高卒4年目の今季はウエスタン・リーグで8勝(3敗、防御率3.94)を挙げ最多勝に輝いた。厚澤投手コーチは「ストレートは1軍レベル。あとは、スライダーなど変化球を磨けば」と明るい未来を望む。2人の“絶対的戦力”が抜けたとはいえ、若手の台頭は心強い限りだ。

 ここにトミー・ジョン手術を終え、リハビリ生活を懸命に行う椋木蓮投手も加わる。先発、中継ぎどちらでも対応可能な山岡泰輔投手は「先発でも、後ろでもいけるように準備します」とどっしりと構える。チームの合言葉は「全員で勝つ」。オリックスにとって、左右の主戦投手の流出は、大きな問題ではないようにも見える。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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