現役ドラフトから「抑え務める可能性ある」 専門家が分析…“期待値トップ級”右腕

現役ドラフトで他球団に移籍する愛斗、馬場皐輔、佐々木千隼(左から)【写真:荒川祐史、小林靖】
現役ドラフトで他球団に移籍する愛斗、馬場皐輔、佐々木千隼(左から)【写真:荒川祐史、小林靖】

今季は大竹、細川が活躍「“出血”しないといい選手が獲れない」

 出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化することを目的とする「現役ドラフト」が8日に開催された。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)の4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「初めて実施された昨年に比べて、対象となった選手のランクが上がった印象です」と評する。

 昨年の現役ドラフトでは12選手が移籍。ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手は21試合12勝2敗、防御率2.26と“大化け”し、チームが18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一を達成する上で、原動力の1人となった。DeNAから中日に移籍した細川成也外野手はプロ7年目で初めて規定打席数をクリアし、チーム断トツの24本塁打、78打点をマーク。過去5年間で通算6本塁打、19打点だった“未完の大器”が、現役ドラフトのお陰で花開いた。一方で、半数の6選手が1年限りで戦力外通告を受けた(うち2選手は育成選手として契約)現実もある。

 野口氏は「あくまで現時点での印象ですが、活躍する可能性のある選手は昨年より多いと思います」と語り、「それなりの“出血”をしなければ、いい選手を獲れない制度であることを各球団が認識した結果ではないでしょうか」と指摘する。

 現役ドラフトは、12球団がそれぞれ2人以上を対象選手としてリストを出し合い、獲得希望選手を通知。最も多くの獲得希望を集めた球団が指名順位1位となる(獲得希望が同数の場合は、今年のドラフト会議2巡目の指名順)。他球団が欲しがる選手を供出した球団ほど、思い通りの指名を行えるわけだ。

 野口氏は12選手の中で特に期待値の高い3選手として、愛斗外野手(西武→ロッテ)、佐々木千隼投手(ロッテ→DeNA)、馬場皐輔投手(阪神→巨人)を挙げる。

 8年目・26歳の愛斗は今季、開幕から40試合連続「右翼」でスタメン出場した。強肩と守備範囲の広さに加え、序盤は猛打を振るってレギュラーに定着しかけたが、徐々に打率が低下。最終的に73試合で4本塁打、15打点、打率.214に終わった。7年目・29歳佐々木千は今季1軍登板こそ2試合にとどまったが、2021年には54試合で防御率1.26の実績を残している。6年目・28歳の馬場は今季19試合2勝1敗、防御率2.45で、一昨年には44試合に登板している。

DeNA、巨人の補強ポイントに合致する佐々木千、馬場

「馬場に関しては、同じ右の中継ぎとして加治屋(蓮投手)、石井(大智投手)が台頭したので、対象選手になる可能性もあると見ていましたが、愛斗、佐々木千は正直言って意外でした」と野口氏は驚きを隠せない。

 佐々木千が加入するDeNAは、今永昇太投手がポスティングシステムの利用を申請し、石田健大投手も国内FA権を行使。トレバー・バウアー投手も去就未定で、タフネス左腕のエドウィン・エスコバー投手も自由契約となった。投手陣から大量の離脱者が出る可能性がある。救援陣では抑えの経験がある山崎康晃投手が今季防御率4.37、三嶋一輝投手も同4.84と振るわなかった。

 野口氏は「とにかく投手が欲しいのが実情。佐々木千がセットアッパーとして活躍した一昨年の輝きを取り戻せれば貴重な戦力になりますし、最大で来季クローザーを務める可能性まであると思います」と見る。「今季17セーブを挙げた森原(康平投手)がいますし、山崎もこのまま黙ってはいないはず。難病を克服して今季復帰を果たしたばかりの三嶋は、来季こそ本格的な復活が期待できる。佐々木千を含めていい競争ができれば、楽しみですね」と続けた。

 リリーフ陣の不振が2年連続Bクラスの要因となった巨人も同様だ。「球威のある馬場は、制球を乱してピンチを背負う“劇場型”のところがありますが、ハマるとすごい投球をする。うまくいけば、巨人でセットアッパーを担える力があります」と期待する。DeNA、巨人あたりは補強ポイントに合致する選手を指名できたといえそうだ。

「ここから先は本人たち次第。大竹や細川がそうだったように、キャンプからアピールできるかどうか」と野口氏。移籍する選手たちには、現役ドラフトの価値と注目度がますます高まるような活躍を期待したい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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