現役ドラフトで“覚醒”選手が生まれる理由 指導者変更が転機に…新天地がもたらす変化

中日・細川成也【写真:荒川祐史】
中日・細川成也【写真:荒川祐史】

4球団で計21年間捕手として活躍した野口寿浩氏

 出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化することを目的とするNPB「現役ドラフト」が8日に開催され、初めて実施された昨年と同じく、各球団1人ずつ計12人の移籍が決まった。昨年の内訳は投手と野手がちょうど6人ずつだったが、今年は投手9人、野手3人。とは言え、“少数派”の野手にも注目度の高い選手が含まれている。

 対象となった12人のうち、とりわけ注目される選手の1人が、西武からロッテに移籍する愛斗外野手だろう。今季は開幕から5月19日のソフトバンク戦まで40試合連続スタメン出場するなど、レギュラーに定着しかけたが、徐々に打率が下降し、73試合4本塁打15打点、打率.214に終わった。プロ8年目の26歳。まだまだ伸びしろがある上、昨季121試合、9本塁打28打点の実績もある。一方で、西武では2022年ドラフト1位ルーキーの蛭間拓哉外野手、21歳の長谷川信哉内野手らが外野手として台頭し、定位置争いが厳しくなっている事情もあった。

 現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)の4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、「私がヤクルトの2軍バッテリーコーチを務めた2017年に、(当時高卒2年目の)愛斗が2軍レベルでは際立ったバットの振りをしていた印象があります」と言う。打撃は好不調の波がやや激しいところがあるが、強肩、俊足で守備力も高い。「“第2の細川”になってもおかしくない」と評価する。

 昨年の現役ドラフトの対象となった野手のうち、ピカイチの結果を残したのが、DeNAから中日に移籍した細川成也外野手である。140試合に出場し、24本塁打と78打点はいずれもチーム最多。プロ7年目で初めて規定打席をクリアし、打率.253をマークした。34試合で4番を張るなど、シーズンを通してクリーンアップを務めた。それまでプロ入り以降6年間で通算6本塁打、19打点に過ぎなかったのに比べ、まさに見違えるようだった。

巨人→ヤクルト北村は山田、長岡のバックアップとして期待大

「細川の急成長は、和田一浩打撃コーチとの出会いが一番の要因だったのではないかと思います」と野口氏。「これは12球団の全選手に言えることですが、合う指導者と合わない指導者がいる。選手は指導者を含めた環境が変わることによって、ブレークする可能性を秘めています」と語り、「愛斗にとってロッテの村田(修一打撃)コーチや福浦(和也ヘッド兼打撃)コーチが、細川にとっての和田コーチになってもおかしくない」と見る。

 巨人からヤクルトに移籍する北村拓己内野手は、長打力を秘めた打撃に、内野の全ポジションを守れる器用さを兼ね備えている。野口氏は「ここ数年故障がちな山田哲人(内野手)のバックアップの二塁手として貴重な存在になると思いますし、遊撃手としても若い長岡(秀樹内野手)の尻を叩くのに格好の選手です」と指摘する。

 ソフトバンクから日本ハムに移籍する水谷瞬外野手は、プロ5年間でいまだ1軍出場がないが、まだ22歳で身体能力の高さに定評がある。水谷と同い年の万波中正外野手を、今季ベストナイン&ゴールデン・グラブ賞に育て上げた新庄剛志監督が、手ぐすねを引いて待っているのではないだろうか。

 昨年の細川、大竹耕太郎投手(ソフトバンク→阪神)に続き、移籍前と移籍後のギャップでファンを驚かせてほしいものだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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