桑田ロードの真実は「全く違う」 芝生が剥げる猛練習も「ただ走っていたわけでは」

巨人・桑田真澄2軍監督【写真:荒川祐史】
巨人・桑田真澄2軍監督【写真:荒川祐史】

走り込みで芝生が剥げたフェンス沿いは「桑田ロード」と呼ばれた

 阿部慎之助新監督が率いる巨人で、桑田真澄2軍監督には若手の育成に期待がかかる。10月16日に正式に就任。2軍の秋季練習ではスポーツ医科学を活用した選手育成を進め、選手たちにはプロ意識を持つことを伝えるなどしてきた。

 現役時代から、練習には必ずひと工夫加えてきた。1995年10月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、リハビリのため走り込み。芝生が剥げたジャイアンツ球場の外野フェンス沿いは「桑田ロード」と呼ばれた。試練を乗り越えるため、コツコツと積み重ねた努力の結晶――。今も語り継がれているが、狙いは下半身強化のためだけではない。ゲーム感覚も養うためだった。

「今日は阪神戦、球場は東京ドームなどと、頭の中で試合のイメージトレーニングをしながら走っていました。阪神の1番は和田(豊)さん。初球から打ってこないから外角ストレート甘めで確実にストライクを取る。2球目は同じ軌道からスライダーで手を出してくれたらもうけもの。そんな風に、試合を想定しながら走っていたんです」

「シミュレーションで9回を投げ終わると約45分です。さらに心拍数も設定して走っていました。それを週4回、対戦相手を今日は横浜、明日は広島と変えながら続けていました。ただ、闇雲に走っていたわけではありません。よく『桑田は修行僧のように走っていた』と言う人もいるんですけど、全く違うんですよね」

プロ入り時の練習は毎日ブルペン投球も「今日は積極的休息。肩と肘を休めます」

 現役時代は主に読書から練習法などを吸収。周囲からは「変人扱いをされていた」と苦笑いする。

「プロ入りした当時の野球界は毎日ブルペンに入ることが当たり前でした。でも、僕は『今日は積極的休養のためノースロー。肩と肘を休めます』とコーチに伝えて、ランニングだけして練習を上がる日もありました。周りからは『おまえ、サボるのか』『実績を残してから言え』と言われましたけどね。今考えたら、あの年齢でよくそんなことを言えたなと思いますね」

 現在、桑田はジャイアンツの球団方針に基づいて、スポーツ医科学を活用した選手育成を掲げている。ジャイアンツ球場に隣接する施設には、選手の動作解析などを行えるラボラトリー(研究室)が完成する。時代とともにコーチングも変化する象徴的な施設といえるだろう。桑田も2軍の秋季練習では、選手のみならず、コーチ陣に対しても課題を提示。その1つが「毎日練習メニューを変えること」だった。

「この練習をずっとやってきたから明日もやる、では思考停止です。今日はこんな練習をします。“なぜならば”、と根拠のあるメニューを組んでほしいし、コーチにも新しい取り組みにトライしようと言っています」

 常勝軍団の復活へ、桑田イズムを浸透させていく。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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