1020億円契約も「もっと打てるしもっと勝てる」 恩師が描く大谷翔平の完成形

第20回「タニタ健康大賞」の授賞式に参加した栗山英樹氏【写真:宮脇広久】
第20回「タニタ健康大賞」の授賞式に参加した栗山英樹氏【写真:宮脇広久】

ハム時代の監督で“投打二刀流”生みの親の1人「彼の本質」

 世界プロスポーツ史上最高額の10年総額7億ドル(約1020億円)でドジャースと契約合意したと自身のインスタグラムで発表した大谷翔平投手。既にメジャーでMVPを2度獲得した29歳は、この先どこまですごい野球選手になっていくのか。恩師の栗山英樹氏は、大谷の“完成形”をどう描いているのだろうか。

 栗山氏は11日、「第20回タニタ健康大賞」に選出され、都内で株式会社タニタの谷田千里社長からトロフィー、副賞100万円などを贈呈された。報道陣に囲まれると、次から次へと大谷についての質問を受けた。

 大谷が日本ハムに在籍していた2013年から17年までの5年間、監督は一貫して栗山氏が務めていた。そして今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で“再タッグ”を組み、侍ジャパンが3大会ぶりの世界一に輝く原動力となった。

 もともと、大谷は岩手・花巻東高から直接MLBに挑戦する意向を表明していたが、日本ハムがドラフト1位で強行指名し、斬新な「投打二刀流」を提案するなどして口説き落とした。栗山氏も監督として入団交渉に同席した経緯があるだけに、二刀流への思い入れは人一倍だ。

 大谷は今年9月に右肘の手術を受けた影響で、来季は打者1本でプレーするが、栗山氏は「(大谷が打者のみでプレーした)2019年もそうでしたが、彼の本質は二刀流なので、1つに絞ったから数字が思い切り上がるかと言うと、必ずしもそうはならない可能性があると思います」と指摘する。その上で「今の翔平なら、そういうものを全てすっ飛ばす可能性もある」と付け加えた。

「来年はふらふらするのでどこかのタイミングで遊びに行こうかな」

「二刀流が彼を生かし、彼のモチベーションを上げている。難しいことをやり続けることが、彼の進化を止めないことだと思っています」と強調。「二刀流自体が今後、進化していく可能性がある。投打のどちらかをやめるという選択肢は、今も僕には考えられません」と言い切った。

 大谷の“完成形”をどんな風に考えるか。この問いに栗山氏は「僕の発想にはないことが起きるのかなと思います」と答え、「彼の体が万全になった時には、たとえば外野を守っていて、投手交代でマウンドに上がり、2人くらい抑えてまた元の守備位置に戻るとか。あるいは、普段は先発投手だけれど、大事な試合では外野手として先発して、(クローザーとして)最後を締めるとか……」と想像を膨らませる。「野球で可能な限りのことは、何でも起こす可能性のある選手なので、これから彼がどういう選択をしていくのかが楽しみです」とボルテージを上げた。

 仮に大谷がMLBで過去に1人しかいない“両リーグMVP”を達成したとしても、「本当にほめるのは、彼が引退する時かなと思っています。こんな数字でよかったとは思わないでほしい。もっと打てるはずだし、もっと勝てるはずだと思っています」と語る栗山氏を満足させることはできないのかもしれない。実際、栗山氏は「翔平なら50本塁打したとしても、年間600打席とすれば、僕は『えっ、550打席もホームランを打てなかったの?』という感じなので」と語った。

 侍ジャパン監督の重職から解き放たれた栗山氏は「来年はふらふらするので、キャンプ期間中はアレですけど、どこかのタイミングで(米国に)遊びに行こうかなと思っています」と唇をほころばせ、大谷とグラウンド上で再会する日を楽しみにしている。微笑ましい師弟関係だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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