FA行使表明から残留まで35日 「本人と我々の評価は違う」31歳右腕と球団との“争点”
西武・平井克典は年俸変動制の2年契約でサイン…来季年俸は9000万円
国内FA権を行使した上で残留を表明していた西武・平井克典投手は15日、埼玉県所沢市の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1000万円増の来季年俸9000万円で、年俸変動制の2年契約を結んだ(金額は推定)。チームきってのタフネス右腕は、今月20日に32歳となるが、「まだまだやれる、老け込む年ではないと思っています」と力を込めた。
平井は11月9日にFA権行使を表明した当初から「残りたい気持ちの方が強い」「もう少し時間をかけて球団と話がしたい」と残留を基本線としていた。しかし代理人を立てての交渉は、今月13日に球団を通して残留を表明するまで、実に35日間を要した。何が一番の“争点”だったのだろうか。
渡辺久信GMは「お金ですね」と要約する。「彼は功労者ですし、今季も1年間怪我をせず、中継ぎとしてチームのために頑張ってくれた。われわれも複数年契約という部分で応え、いろいろな意味で評価した上で提示したのが今回の金額です」と説明。「最初から残留宣言を認めていましたし、他球団の話を聞いてもいいよ、というスタンスでした。本人の自己評価と、われわれの評価は違うので、そこらへんはね……」と言葉をつないだ。
平井は2019年にパ・リーグ記録を塗り替えるシーズン81試合登板を達成。7年目の今季もチーム最多の54試合に登板して4勝3敗28ホールド、防御率2.55の好成績をマークし、通算100ホールドに到達した。
「おっさん2人でまだまだ頑張ろうよ」に感激
今月20日に32歳となり、アスリートとして微妙な年齢に差し掛かるが、「去年から自主トレのやり方を変えて、今季は平均球速がプロ7年間で一番速かったのです。まだまだ改善の余地、変われるチャンスはあると思っています」とアピールする。今季も球種の割合は得意のスライダーが40%以上を占め、35%前後のストレートの平均球速は約145キロだった。
「(契約交渉の中で)『正直言って年齢的に、これから活躍できる期間は長くないよね』というようなことを言われたので、そこは覆したいです。いい意味で、フロントの方々が思っている数字を全て超えていきたい」。想像していたほどの評価を得られなかったことも、発奮材料に変えていくつもりだ。
FA宣言前から残留に至るまで、最も相談した相手は3歳上の守護神・増田達至投手だった。増田は2020年オフに、国内FA権を行使した上で西武に残留し4年契約を結んでいる。レギュラーシーズンでは今季も、ベテランリリーバー2人で8、9回を担ったケースが数多くあった。「悩んでいた時に、親分(増田)に『おっさん2人でまだまだ頑張ろうよ』と言ってもらえたことが一番うれしかったです」と感激の面持ちで明かす。
オフは昨年に続いて沖縄・宮古島で高橋光成投手、平良海馬投手、渡邉勇太朗投手ら20代前半から中盤までの選手たちと合同自主トレを行う予定だ。「ウチのキン肉マンたちとトレーニングして、パワーアップして帰ってきたいと思います」と意気込む。もう誰にも年齢の心配をさせない決意だ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)