朗希に求められる“通年稼働”「メジャーは甘くない」 元監督が占うロッテの2024年

ロッテ・佐々木朗希【写真:小林靖】
ロッテ・佐々木朗希【写真:小林靖】

ロッテは2023年、終盤に失速しながらもリーグ2位に滑り込み

 2023シーズンのロッテは終盤、ソフトバンク、楽天との混戦を制して、2シーズンぶりとなる2位を掴み取った。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでは2勝1敗でソフトバンクを下したものの、オリックスと対戦したファイナルステージでは1勝4敗(アドバンテージを含む)で敗退した。2025年までに“常勝軍団”になると掲げた「Vision 2025」を実現させる上でも重要な2024年、「大々的なコンバートがありそう」と予想するのが、2022年まで監督を務めた井口資仁氏だ。

 井口氏の後を継いで、2023年から指揮を執ったのが吉井理人監督だ。監督就任に合わせてコーチ陣も一新。2022年シーズンでふるわなかったブランドン・レアード内野手、レオニス・マーティン外野手、アデイニー・エチェバリア内野手が退団し、メジャーで最多セーブの実績を持つロベルト・オスナ投手はソフトバンクへ移籍するなど、外国人選手も総入れ替えとなった。

 シーズン序盤は貯金を順調に積み重ね、5月中旬にはリーグ首位を走ることもあったが、交流戦でつまづいて3位に後退。7月中旬からは2位をキープしたものの9月に4連敗、7連敗と大ブレーキがかかってしまい、薄氷を踏む思いでCS進出を決めた。

野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】
野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】

優勝のため、自分のためにもカギとなる佐々木朗希の2024年

 投手で規定投球回に達したのは、左腕エースの小島和哉投手のみ。25試合で10勝6敗、防御率3.47と奮闘した。右の種市篤暉投手は規定まで6回1/3足りなかったが、23試合で10勝7敗、防御率3.42と大健闘した。

 3・4月度の月間MVPを受賞した佐々木朗希投手は、3月のWBC出場の影響もあってか、7月に左脇腹肉離れで長期離脱。右手中指のマメや発熱もあり、結局、15試合に投げて7勝4敗、防御率こそ1.78という数字だったが、投球回は91イニングにとどまった。

 佐々木の入団当時に立てられた「5か年育成計画」は2024年に5年目を迎える。吉井監督は「中6日登板と150イニング」を達成すべき課題として示しているが、井口氏もまた「来季に関して、朗希はしっかり1年間ローテを守ることですよね」と頷く。

「朗希はまだ一度も1年間投げ続けたことがない。1年間しっかりとローテを守れれば、小島、種市と合わせて、先発陣はある程度の勝ち星が計算できるでしょう。やはり野球はピッチャーがしっかりしないと勝てない。この3人が機能すればロッテにとって大きな強みとなります」

 このオフ、佐々木がメジャー移籍を希望しているという報道があったが、井口氏は「早ければ5年目が終わる来オフにはポスティングが認められるだろう」と話す。

「今オフにも挑戦という報道がありましたが、将来的に行きたいという意志を伝えただけではないかと思います。WBC優勝で世界一を経験し、一緒に戦った山本由伸がメジャーに行けば、それは自分も行きたくなりますよ。本人としてもやれる自信があるのでしょう。ただ、メジャーは甘くありません。1年間ローテを守り抜いたことがなければ、周りを納得させる成績も残していない。優勝のため、そして自分の未来のためにも、2024年の投球がカギになるでしょう」

 リリーフ陣では、2023年に最優秀中継ぎに輝いたルイス・ペルドモ投手の去就が未定。再契約できない場合、抜けた穴は大きく響くだろう。同時に、史上10人目となる通算200セーブを達成した益田直也投手の存在は大きいが、「この先を考えると、チームとしてもう1人クローザーを任せられる投手を作らないといけない」と井口氏は続ける。

「益田は2018年に70試合を投げて以降、6シーズン連続で50試合以上を投げており体力はあります。ただ、2024年で35歳という年齢を考えると、もう1人抑えを作っておいた方がいい。今季は他球団から移籍してきた坂本光士郎(前ヤクルト)、西村天裕(前日本ハム)、澤田圭佑(前オリックス)が頑張って、良い働きをしていました。横山陸人も38試合で投げるなど頑張っていましたね。このあたりが益田、そして澤村(拓一)といったベテランに食い込んでいければ面白いと思います」

元本塁打王ソトが加入、将来を見据えた大コンバートの可能性も

 打線では、今季26本塁打を放ち、ロッテでは1986年の落合博満以来37年ぶりとなる本塁打王となったグレゴリー・ポランコ外野手と再契約。さらには今季までDeNAで活躍し、2度本塁打王となったネフタリ・ソト内野手を獲得し、打線の核を固めた。ソトが加入したこと、数年先のチーム編成などを考えた時、井口氏は「来季はおそらくコンバートがあると思います」と予想する。

「2022年から吉井監督と話をしていた案ではありますが、おそらく来季は藤岡(裕大)が二塁、(中村)奨吾が三塁、安田(尚憲)、ソトが一塁という形になると思います。遊撃は友杉(篤輝)、茶谷(健太)らが争うことになるでしょう。奨吾も藤岡も長くプレーしたいなら、長所を生かすためにもコンバートする形がいい。一塁には山口(航輝)も入ってきますが、外野も守れる。ソトの加入がチームに良い刺激をもたらすはずです」

 安田、山口、ソトは一塁だけではなく、DH枠を使いながらのポジション争いとなりそうだが、井口氏は若手から中堅になりつつある日本人選手たちの成長が大きく促される効果を期待する。

「安田、山口、藤原(恭大)といった野手たちは、伸び悩みとは言わないまでも、成長の階段をゆっくり上がっていて、なかなか球団が期待する通りのペースでは上がりきれていない。そこは本人たちが一番強く自覚しているとは思いますが、少し危機感を持てるといいのかもしれません。今季はほぼポランコの活躍に救われました。そこにソトが加わり、ますます外国人打者頼りになる可能性もありますが、プレッシャーが軽減することを上手く生かして、日本人打者が飛躍するチャンスにしてほしいですね」

 常勝軍団の仲間入りをしていることを宣言した2025年まで、あとわずか。1974年以来50年ぶりとなる“ペナントレース優勝”を目指すロッテが、どんな野球を仕掛けてくるか楽しみだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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