道楽、売名は否定…新球団46歳オーナーがNPB2軍に手を上げた理由 強調した強い覚悟

「くふうハヤテベンチャーズ静岡」の記者会見の様子【写真:宮脇広久】
「くふうハヤテベンチャーズ静岡」の記者会見の様子【写真:宮脇広久】

ウエスタン・リーグに新規参入する球団名は「くふうハヤテベンチャーズ静岡」

 今季からNPB2軍のウエスタン・リーグに新規参加する新球団の名称が、「冒険的な事業」や「起業」を意味する“ベンチャーズ”に決まった。球団を運営する「ハヤテ223(ふじさん)株式会社」は16日、都内で会見を開き、「株式会社くふうカンパニー」と資本業務提携契約を結び、球団の正式名称を「くふうハヤテベンチャーズ静岡(略称=くふうハヤテ)」とすると発表した。

 くふうカンパニーの穐田誉輝代表は「新しい世界に果敢に挑戦する思いを込めて名付けました」と説明。ハヤテ223の杉原行洋代表は「くふうカンパニー様は、常に挑戦者精神を失わないベンチャー企業。われわれハヤテも、ベンチャー魂を持ったグループであり続けたい。さらに、本拠地の静岡県は世界に冠たるスズキ株式会社様、ホンダ様、河合楽器製作所様などの創業地でもあり、なじみがよろしいと思いました」と力説した。

 くふうハヤテは昨年11月22日、イースタン・リーグに加わる「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」とともに、NPB2軍への新規参加を正式に承認された。ウエスタンとイースタンを合わせると14球団となった。2軍限定とはいえ、NPBにとってはセ・リーグ6球団、パ・リーグ7球団の計13球団だった1957年以来、66年ぶりに“12球団”の枠組みが崩れる歴史的な出来事となった。杉原代表は「まさにベンチャー魂を持って、66年ぶりの挑戦を行っていきたい」とボルテージを上げた。

 杉原代表は、27歳の若さでハヤテグループの先駆けとなる資産運用会社ハヤテインベストメントを設立した起業家で、現在46歳。一方、タッグを組むことになった、くふうカンパニーの穐田代表も、グルメサイト「食べログ」の生みの親で、「カカクコム」や「クックパッド」も育てた54歳の伝説的な経営者だ。妻が女優の菊川怜さんであることでも知られている。

 杉原代表は「穐田代表とは切磋琢磨しながら、10年以上いろいろとご指導をいただいていてきた仲です。『いつか一緒に何かできたらいいね』と話してきました」と明かす。

 杉原代表は「私のことを『(球団の)オーナー』と呼ぶ方もいますが、私個人がチームを持っている感覚はありません。球団は社会の公器だと思っていて、社会的事業をやらせていただくチャンスをいただいたのだと思っています」と強調する。

静岡の野球熱、NPBの「12球団本拠地以外での野球振興」への思い…

「『投資として球団を経営するのでしょう?』と言う人もいますが、答えはNOです。よくも悪くも、スポーツは単体では儲かりません。『会社の知名度を上げたいのでしょ?』とも言われますが、それもNOです。われわれは法人向けのビジネスを展開している会社で、ネットメディアでバズる必要はないのです。道楽にも、売名にも興味はありません」と熱弁を振るった。

「いろいろなご縁があって、地域に根ざしたインパクトのある社会的ビジネスだから、手がけることにしたのです。静岡の野球熱、NPB様の『12球団が本拠地を置いていない地域で野球振興をしたい』というお考えなど、いろいろな思いが奇跡的にピタッとそろった。これを逃す手はないと思いました」と杉原代表は強調する。

 実は杉原代表自身、野球よりサッカーが好きで、今も東京都社会人サッカー連盟4部リーグに所属するチームでFWやセンターバックとしてプレーしているという。

 かつてはNPBでも、大きな赤字を抱えながら、親会社の知名度アップや野球好きの経営者の個人的な道楽を目的に球団を経営するケースがあったが、ベンチャーズはどれにも当たらないというわけだ。24日には、新ユニホームがお披露目される予定。勢いのある若い実業家が運営する新球団に、NPBを大いに盛り上げてほしいものだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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