現役ドラフト移籍で眠る“お宝” 2軍最多勝や元ドラ1…1軍未出場の大器も

ソフトバンクに移籍した元日本ハム・長谷川威展(左)とロッテに移籍した元西武・愛斗【写真:矢口亨】
ソフトバンクに移籍した元日本ハム・長谷川威展(左)とロッテに移籍した元西武・愛斗【写真:矢口亨】

現役ドラフトで移籍した大竹耕太郎と細川成也が昨季新天地で飛躍した

 昨年12月8日に開催された現役ドラフトで、12人が新たなチームに移籍した。2022年の現役ドラフト組の中では、大竹耕太郎投手(ソフトバンク→阪神)と細川成也内野手(DeNA→中日)が新天地で主力として活躍。今回移籍した選手たちもキャンプから積極的なアピールが期待される。今回は、2023年の現役ドラフトでパ・リーグ球団に加入した、6人の選手たちについて詳しく紹介する。

○水谷瞬外野手(ソフトバンク→日本ハム)

 水谷は2018年ドラフト5位でソフトバンクに入団。1年目の2019年は3軍が主戦場だったが、2020年からは2軍での出場機会を伸ばしていく。3年目の2021年には69試合に出場し、打率.276、出塁率.342を記録して成長の跡を示した。2022年は13試合の出場にとどまったが、2023年には2軍で自己最多の83試合に出場し、ともにキャリア最多の60安打、35打点を記録。5年間のプロ生活で1軍出場は一度もないものの、高いポテンシャルを示している。新天地では、水谷と同学年の万波中正外野手が2023年に本塁打王を争うほどの大ブレークを果たした。若手の成長が著しい北の大地で、万波に続く活躍を見せる可能性は十分だ。

○櫻井周斗投手(DeNA→楽天)

 櫻井は2017年ドラフト5位でDeNAに入団。プロ2年目の2019年に1軍デビューを果たすと、2年後の2021年にはロングリリーフを中心に30試合に登板し、防御率3.07、奪三振率8.12と優れた成績を残した。だが、2022年は故障などの影響で1軍での登板はなく、オフには育成契約に移行。2023年4月に支配下復帰を果たしたが、2年続けて1軍登板はなかった。それでも、2軍では36試合に登板し、防御率3.38。楽天は松井裕樹投手のFA移籍で、左のリリーフは鈴木翔天投手を除いて手薄となる。それだけに、実績ある櫻井の復活には大きな期待が寄せられることだろう。

○中村祐太投手(広島→西武)

 中村は2013年ドラフト5位で広島に入団。プロ4年目の2017年には主に先発として15試合に登板し、5勝を挙げて防御率3.74を記録も、その後2年間は投球に安定感を欠き、1軍定着とはならなかった。7年目の2020年には先発として8試合に登板し、防御率2.31とキャリアベストの投球を披露したが、2021年は防御率11点台、2022年は1軍登板なしと苦しみ、2023年は防御率1.43ながら5試合で5失点(自責点1)と、信頼を勝ち取るには至らなかった。一方で、2023年の2軍成績は28試合で防御率1.08、奪三振率9.45、K/BB4.38。新天地では2軍での好成績を飛躍につなげ、先発陣の一角を勝ち取りたいところだ。

愛斗は選球眼に課題もパンチ力ある打撃と高い守備力が武器

○愛斗外野手(西武→ロッテ)

 愛斗は2015年ドラフト4位で西武に入団。6年目の2021年に97試合で8本塁打を放って主力に定着すると、2022年には121試合に出場して9本塁打を記録。リーグ屈指の外野守備とパンチ力のある打撃を生かし存在感を示した。2023年も活躍が期待されたが、打率.214、OPS.559と不振に陥り、73試合の出場に終わった。267打席でわずか3四球と選球眼に課題を抱えることもあり、環境の変化に伴って打席でのアプローチが変化するかも重要になりそうだ。2023年のロッテは、角中勝也外野手や石川慎吾外野手に早いイニングから守備固めが送られることが多かった。高い守備力を持つ愛斗が1軍で出場機会を確保できる土壌は備わっているだけに、攻守に躍動を見せてほしいところだ。

○鈴木博志投手(中日→オリックス)

 鈴木は2017年ドラフト1位で中日に入団。プロ1年目の2018年から53試合に登板し、16ホールドポイント4セーブを記録した。防御率4.41とやや安定感は欠いたものの、ルーキーながら勝ちパターンの一角として奮闘を見せた。2年目の2019年には開幕からクローザーを託されて14セーブをマークしたが、防御率4.32で守護神定着は叶わなかった。2年目以降はやや苦しんでいるものの、パワーピッチャーとしてのポテンシャルの高さはアマチュア時代から注目される存在。本格派投手の育成に長けたオリックスへの移籍を機にその才能を開花させ、強力なブルペンにさらなる厚みを加える存在となれるか。

○長谷川威展投手(日本ハム→ソフトバンク)

 長谷川は2021年ドラフト6位で日本ハムに入団。プロ1年目の2022年は2軍で10試合に登板して防御率1.80、奪三振率12.60。1軍でも2試合に登板して無失点に抑え、プロ初ホールドも記録するなど確かな存在感を示した。2023年も2軍で34試合に登板して防御率3.00、奪三振率9.21と活躍し、リリーフながら8勝を挙げてイースタン・リーグ最多勝を獲得。1軍でも9試合に登板して防御率1.08と安定した投球を見せた。ソフトバンクでは長年にわたって左キラーを務めた嘉弥真新也投手が退団。以前に比べてやや手薄となるだけに、変則左腕の長谷川が台頭を果たす余地は大いにあるはずだ。

 パ・リーグ球団に加入した選手のうち、先述した選手以外で新天地で出場機会を伸ばしたのは大下誠一郎(オリックス→ロッテ)のみ。その大下もムードメーカーとしてチームを盛り上げる活躍を見せたものの、1軍出場は23試合と主力に定着するには至らなかった。それだけに、今回紹介した6人には、新天地で出色の活躍を見せてパ・リーグを盛り上げる存在となってほしいところだ。2024年シーズンにおいて各選手がどれだけの出場機会を獲得し、どんなプレーを見せてくれるか。現役ドラフトで新たなチャンスを得た選手たちの活躍に、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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