思い出したおばあちゃんの知恵 「いつもの2倍食べた」若月健矢を支える“青いボトル”

オリックス・若月健矢【写真:北野正樹】
オリックス・若月健矢【写真:北野正樹】

ラムネパワー発揮のオリックス・若月健矢「ブドウ糖は良い」

 子どもだけのお菓子ではない。オリックス・若月健矢捕手にとって、試合中のサプリメントは、清涼菓子でお馴染みとなっている青いボトルのラムネだ。「これを食べると、すごくいろんなことが考えられるような気がしますね」。ラムネの効用について若月は、自主トレーニング中の大阪・舞洲で語った。

 試合中のベンチでラムネを食べるようになったのは、2023年の9月頃からだという。普段から、アメを口に入れているのを見ていたトレーナーが、森永製菓のラムネを勧めたのがきっかけだった。「アメを食べるのなら、ブドウ糖が入っているラムネがいいんじゃない? という話でした」。ミットを外した手で青いボトルを持ち、ニッコリと振り返る。

 商品には国内製造のブドウ糖が90%配合されており、子どもたちが食べるだけでなくアスリートのオン・オフの切り替えや、受験生が集中したりするために摂取するケースも増えてきているようだ。若月にも、思い当たる節があった。「子どものころ、おばあちゃんに『勉強で頭を使う時には甘いものを食べるといいよ』と教えてもらっていましたから、ブドウ糖は良いと思いました」。懐かしい味をしっかりと噛み締める。

 若月がラムネ効果を実感したのは、昨年10月20日だった。ロッテとのクライマックス・シリーズ、ファイナルステージ第3戦(京セラドーム大阪)で、ふと気がついたという。両チームが譲らず、8回表終了時点で0-0と均衡が続いた。

 8回裏、杉本の二塁打などで2死三塁のチャンスを作ると、若月に打席が巡ってきた。しぶとくレフト前に転がす先制点は決勝打になった。守っても東-小木田-山岡-宇田川-平野佳の5投手をリードし、完封リレーを引き出し、3年連続日本シリーズ進出に王手をかけた。

 緊迫する展開の中、若月は4本のラムネを空にした。「いつもの2倍は食べました。糖分をしっかり摂って頭を働かせようと思って。ラムネの数が増えたのが良かったんじゃないですか」と、殊勲の陰にラムネがあったことを明かした。

森永製菓から届いた段ボール箱は“エネルギー”

 試合に勝っただけでなく、うれしい出来事もあった。若月が試合中にラムネを食べていることを知った森永製菓から、球団を通じてラムネが段ボール箱いっぱいに送られてきたという。「普段の生活ではお菓子は一切食べません。ガムも無糖を選んでいますが、ラムネだけは別です。試合中はもちろん、デーゲームの練習中にも食べますね。やっぱり、頭をクリアに使いたいんで」。効果は抜群だった。
  
 今季で11年目を迎える。自身のテーマは「まず、試合に出ること。やっぱり、そこですね。チームのピースになれるようにという感じです」。2023年は96試合に出場し、ゴールデン・グラブ賞を初受賞した。

 ただ、慢心はない。打率.255、盗塁阻止率.293といずれも前年より数字が下がり、今季こそ成績を上げることも目標に掲げる。「バッティングでは、いやらしい打者になれるように頑張りたいですね。投手との共同作業になるのですが、盗塁阻止率も2022年(.442)くらいの数字は残したいです」。29グラム、約40粒入り。コンビニで1本80円ほどのラムネパワーで頭をスッキリさせ、投手を盛り立てる。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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