育成から大飛躍の西武2020年組、類似するタイトルへの道…元新人王と有資格の21歳

西武・豆田泰志(左)と水上由伸【写真:小林靖】
西武・豆田泰志(左)と水上由伸【写真:小林靖】

水上由伸は2022年に新人王と最優秀中継ぎの“ダブル受賞”

 育成選手としてプロの門を叩き、そこからチームの主力に成長する選手の数は決して多くはない。しかし2020年の育成ドラフトで揃って西武に指名された水上由伸投手と豆田泰志投手は、いずれもリリーフの中核を担う投手に飛躍を遂げつつある。

 豆田は身長173センチ、水上は176センチと、プロの投手としては小柄なところも共通点となっている。育成ドラフトの下位指名から這い上がってプレーする両選手は、これから多くの野球少年に夢を与える存在となるかもしれない。

 水上は帝京第三高、四国学院大を経て、育成ドラフト5位で入団。この順位は2020年のドラフト会議における、全体で最後の指名だった。順位こそ低かったが水上は1年目の2021年から順調にアピールを続け、5月13日には早くも支配下登録を勝ち取った。

 同年6月に1軍へ昇格すると、プロ初登板から17試合連続無失点のパ・リーグ新記録を樹立する驚異的な活躍を披露。29試合に登板して4ホールド、防御率2.33と好成績を残し、翌年以降のさらなる活躍にも期待を持たせた。

 続く2022年は60試合に登板して防御率1.77と安定感抜群の数字を残し、セットアッパーとして35ホールドポイントを記録。同僚の平良海馬投手と並んで、自身初タイトルとなる最優秀中継ぎの座に輝いた。さらにはオリックスの阿部翔太投手との争いを制し、新人王のタイトルも受賞。育成指名からわずか2年でシンデレラストーリーを歩んだ。

 2023年は平良が先発に転向したこともあり、水上にはブルペンの柱としての活躍が期待されたが、開幕からコンディション不良に苦しみ、23試合と登板機会を半数以下まで減らすことに。それでも、7月に1軍へ復帰して以降は好投を見せ、最終的には防御率2.12の数字を残した。

豆田泰志は支配下登録された昨季に一気にブレーク

 21歳の豆田は浦和実高から、2020年に育成4位指名で入団。高卒1年目の2021年は2軍で9試合に登板したが、防御率9.45とプロの壁に跳ね返された。しかし翌2022年は2軍で18試合の登板で81回1/3を投げて防御率3.76と確かな成長の跡を示した。

 そして2023年のシーズン途中にオリックスの山本由伸投手に近いフォームへ変更したことをきっかけに、投球内容が飛躍的に向上。2軍で26試合に登板して防御率2.43を記録しただけでなく、奪三振率も「11.53」と高い水準に達した。この活躍が認められ、同年7月21日に支配下登録への移行を果たした。

 1週間後の7月28日に1軍でプロ初登板を果たすと、そこから8試合連続で無失点に抑える快投を披露。シーズン終了までに16試合に登板して失点はわずか1、防御率0.59という素晴らしい成績を記録した。勝ちパターンの一角として6ホールド、1セーブを記録するなど、リリーバーとして大きな存在感を示している。

 ここからは、両投手のキャリアを通じての指標に注目する。水上の通算被BABIP、すなわち本塁打を除くインプレーの打球が安打になった割合は.225と非常に低く、打たせて取る投球を支える大きな要素となっている。

 その一方で与四球率はキャリア通算で4.23と、制球面に課題を抱えていることもわかる。ただし、最優秀中継ぎに輝いた2022年の与四球率は2.73、WHIPも0.91で、コントロールの安定が成績向上につながっていた。ただ昨季の与四球率は7.41、WHIPも1.53と大きく悪化。苦しい投球を強いられた理由が示されていた。

2022年の制球力を再現できるか否かが今後の活躍に向けた鍵となる

 豆田は昨季の被打率は.098、被BABIPは.190といずれも低かった。。与四球率が4.11とやや高く、制球に課題を残している点も水上と共通する。BABIPは運に左右される部分が大きく好成績を残し続けるためにコントロールのさらなる改善は不可欠だ。

 投手が新人王を受賞するための資格は、「支配下登録から5年以内かつ、前年までの1軍での投球回が30イニング以内」と定められている。豆田の2023年の1軍での投球回は15回1/3のみで、今季の新人王を獲得する資格を有している。こうした流れも水上と共通している。

 育成ドラフトの下位指名という立場から這い上がり、プロの舞台で存在感を放つ2人。入団時の注目度の低さや、体格的な“不利”を乗り越えてシンデレラストーリーを描く両右腕の活躍に、注目してみてはいかがだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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