オリ守護神はなぜ失点しないのか? 走者を出すと見せる変化…ピンチで冴え渡る“魔球”

オリックス・平野佳寿【写真:荒川祐史】
オリックス・平野佳寿【写真:荒川祐史】

平野佳寿は昨年10月2日に史上4人目の日米通算250セーブを達成

 NPB復帰3年目となった昨季も守護神としてチームを支え、オリックスのリーグ3連覇に貢献した平野佳寿投手。42登板のうち、失点を許したのは5試合のみ。メジャー時代を含めたプロ18年間でベストの防御率1.13をマークするなど抜群の成績を残した。ところが、1イニングあたりに許した走者の人数を示すWHIPはむしろ悪化しており、ファンが気をもむシーンも少なくなかった。今回は、直近2年に比べると走者を抱える場面が多かった平野佳が、なぜこれほどの好成績を収めることができたのかを探っていきたい。

 平野佳は三振を奪う能力に優れたピッチャーであるが、昨季は以前と比べて奪三振数が減少しており、特に走者がいない状況における奪三振割合は前年の1/3程度だった。走者を許すケースが増えた原因は、主にこの奪三振割合の低下にあると考えられる。その一方で、走者を抱えた場面では三振を奪うことができており、それに伴って被打率も低くなっている。

 走者を許したあとに奪三振割合が高くなる理由を知るために、走者有無別の投球内容の変化をもう少し細かく見ていく。まず球種の投球割合について調べると、ノーストライク、1ストライク時において走者の有無による配球の変化が見られた。走者あり時は走者なし時と比べてフォークの投球割合が8.3ポイント増加。走者を許したあとは、決め球であるフォークを浅いカウントでも多用していたことが分かる。

 次に注目したいのは、走者あり時にフォークのボールゾーンスイング率が上がっている点だ。フォークを投じる主な狙いは打者にボール球を振らせて空振りを奪うことであり、走者を置いた場面では、より意図通りに打者のスイングを誘うことができていたといえる。もともと打者はランナーがいるとボール球への手出しが増える傾向があり、ストライクゾーンからボールゾーンへと変化するフォークは、こうした打者の打ち気をそらすボールとして大いに効果を発揮した。

 最後に他の球種も含め、スイングを仕掛けられた際の結果ごとの割合を見てみよう。走者あり時はフォークを多投した結果もあって空振りやファウルの割合が増えており、打者が打ちにきたボールで効果的にストライクを稼ぐことができていた。またそれに伴ってインプレー打球の割合は減少しており、結果として打者を2ストライクまで追い込むケースが増加。走者なし時は打者を追い込んだ割合が44.7%と半数に満たなかったが、走者あり時は52.4%まで上がっており、より投手優位で打者と勝負することができていたといえる。

 昨季の平野佳は、前年までと比べて走者を抱える場面こそ多かったものの、自慢のフォークボールを効果的に用いることで打者を追い込み、三振を奪うことでピンチを脱出。得点を許すことなくアウトを積み重ねていった。10月2日の日本ハム戦では日米通算250セーブを達成。日本人では佐々木主浩氏、高津臣吾氏、岩瀬仁紀氏に続く史上4人目の快挙となった。チームには山崎颯一郎投手など優秀なリリーバーも多いが、40歳で開幕を迎える今季も、まだまだ守護神の座を譲るつもりはないだろう。オリックスが日本一を奪還するその瞬間、歓喜の輪の中心には平野佳が立っているのだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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