イップス認められず「言われるのも嫌」 全身蕁麻疹発症…戻れなかった1軍マウンド

元広島・小松剛【写真:本人提供】
元広島・小松剛【写真:本人提供】

元広島投手の小松剛さんはプロ1年目に25試合に登板して5勝を挙げた

 元広島投手の小松剛さんは、2008年ドラフト3位で法大から入団し、1年目に先発と中継ぎで25試合に登板して5勝を挙げた。順調に見えたプロのスタートだったが、2年目にはイップスに陥り、キャッチボールもできないほどのどん底を味わった。現在は総合人材サービス「パーソルグループ」で営業職に就く小松さんが、当時の苦しみを回顧した。

 プロ1年目は「レベルが高すぎてついていくので精一杯でしたけど、プラスになる刺激の方が多かったので、野球って楽しいなと思いながらできていました」と充実の毎日だった。

 2008年、2009年に最多奪三振に輝いたコルビー・ルイス投手に受けた衝撃は忘れられない。「漫画で描いたみたいな胸筋をしていて『ポパイちゃうか』って。体も凄くて球も速いしスライダーも凄い」。アマチュア時代は接することのなかった“外国人選手”のマインドを学べたことも大きかった。

「棚ぼた勝利もありましたけど、5勝できたのは自信になりました」というルーキーイヤーを終え、さらなる飛躍を誰もが期待した2年目だった。開幕ローテーション入りするも、1勝3敗、防御率7.94で2軍落ち。結局、5月1日の登板を最後に、小松さんが1軍のマウンドに上がることはなかった。

2年目にイップスに…「認められなくて『僕は大丈夫です』」

“伏線”は1年目の最後にあったという。9月は2回5失点など打たれる試合も多く「怖さが出た感じがして、全力で腕を振っていくことができなくなっていきました」。そして2年目の途中からはイップスで投げることができず、さらにそんな自分と向き合うことができずに苦しむことになる。

「受け止められませんでした。そこに対してのプライドみたいな、自分は違うって。イップスって言われるのも嫌で、周りを気にしてしまう、それでどんどん落ちていく。イップスなのに認められなくて『僕は大丈夫です、まだもっとできます』みたいな状態でしたね」

 しかし体は正直だった。球場に着いてユニホームに着替えた瞬間に全身に蕁麻疹を発症したこともあった。「体がめっちゃ熱くなって、見たらブワーって出てきて。初めての経験だったので皮膚科に駆け込んだらメンタル的なものだと言われて……。そんなことを経験したくらいきつかったですね」とゆっくりと言葉を紡いだ。

 投げることができず、2軍どころか3軍に落ちた。頭の片隅では分かっていた「イップスの自分」を、もう認めるしかなかった。個人でメンタルトレーナーをつけてメンタルの勉強をしたり、体の動きも一から見直した。そうしてプロ4年目には2軍と3軍を行ったり来たりしながら登板していたが、すでに2シーズン1軍の舞台からは遠ざかっていた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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