“前例なき二刀流”コーチも「見る目変わった」 広島20歳、転機となった黒田氏の助言

春季キャンプで練習に励む広島・新家颯【写真:真田一平】
春季キャンプで練習に励む広島・新家颯【写真:真田一平】

3年目の育成左腕・新家が“二刀流”で目指す支配下登録

 広島に珍しい“二刀流”に挑戦している左腕がいる。3年目を迎えた育成の新家颯(しんや・そう)投手だ。新家が取り組んでいるのはオーバースローとサイドスローの“二刀流”。「悔いは残したくない」と支配下登録に向けて、宮崎・日南キャンプで汗を流している。

 2021年育成ドラフト1位で和歌山・田辺高から入団。182センチの長身から投げ下ろす縦に大きく曲がるスライダーが持ち味で、昨年は2軍で24試合に登板し1勝1敗1セーブで防御率3.91。投球回(23回)を上回る24奪三振を記録した。高いポテンシャルを秘めた左腕に転機が訪れたのは昨年の秋季キャンプだった。

「試合前の調整ではサイドスローを交えて準備するのが自分のルーティンでした。その姿を黒田(博樹・球団アドバイザー)さんが見られていて、試合でもサイドで投げてみてはどうかと言われたのがきっかけです」

 高校2年の時は、ずっとサイドスローで投げていたためオーバースローとの併用に不安はなかった。黒田球団アドバイザーの助言が変幻投法を生み出す呼び水となり、この日から前代未聞の“二刀流”の道を歩むこととなった。

 力で押すオーバースローは、球速は出るものの制球力が課題だった。逆にサイドスローだと制球力は上がるものの球速は10キロ近く落ちる。しかし両方を投げ分けることで弱点を補い、投球の幅を広げることに成功。さらに思わぬ副産物も生んだ。

「多少荒れてもカバーできる」心の余裕が生んだ“進化”

「上から投げる際、しっかりと腕が振れるようになったんです。これまではストライクが入らなかったらどうしようとなることもありましたが、多少荒れてもサイドでカバーできると思えるようになりました。自分にとってサイドは保険みたいな感じですね」

 オーバースローとサイドスローでは変化球も異なる。上からはスライダー、カットボール、チェンジアップを投げ、サイドではカットボールの代わりに黒田球団アドバイザー直伝のツーシームを投げる。得意のスライダーもサイドでは軌道が違う。ストレートの球速差もあるため、打者は対応に手を焼く。

 16日に行われた社会人・日本新薬との練習試合では1回を無失点。今年初の対外試合で結果を出し、好スタートを切った。「非常に楽しみな投球を見せてくれています。本人には『見る目が変わってるから』と伝えていますし、こちらが要求する内容も昨年とは違ってきました」と高橋建2軍投手コーチも期待を寄せている。

 昨年、左のリリーフとして1軍ブルペンを支えたニック・ターリー投手は楽天に移籍。球援左腕が手薄になっているため、結果を残していけば支配下登録もそう遠い話ではない。「1軍で活躍すれば親孝行になるし、母校にも貢献できる。ステップを踏んでいる手応えはあるので、アピールを続けていきたいです」と意気込み十分。前例の少ない挑戦は実を結ぶことができるか、3年目左腕の成長から目が離せない。

【実際の様子】サイドそれともオーバー? “二刀流”で幻惑する広島・新家颯

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