由伸の“助言”は「理解が難しい」も…東晃平が得た学び 追い求める「直球に見える変化球」

オリックス・東晃平【写真:北野正樹】
オリックス・東晃平【写真:北野正樹】

オリックス・東が授かった山本由伸からの“金言”

 遠く離れても、偉大な先輩の言葉は耳の奥に残っている。昨季は6勝無敗で通算7勝をマークするオリックスの東晃平投手は、今季からドジャースに移籍した山本由伸投手のアドバイスを胸に、キャンプ地のマウンドに立つ。

「由伸さんから『変化球も全部、真っすぐと同じと思って投げないといけない』とずっと言われていましたね」。日本を代表する投手の山本は、みんなの「先生」でもあった。東も山岡と一緒にフォークを教わったことがあるが、常に山本が口にしていたのが「変化球の心得」だった。

 東は神戸弘陵高から2018年に育成ドラフト2位でオリックスに入団。プロ2年目にウエスタン・リーグで19試合に登板し、5勝(7敗)を挙げたが、夏場にスタミナ切れを起こすなど安定した成績が残せなかった。トレーニング方法を変え、約20キロの増量で体力がついたことで試合後半でも球速が衰えることはなくなり、プロ5年目に支配下選手登録を勝ち取った。2022年はプロ初勝利を記録し、昨季は負けなしの6連勝でリーグ3連覇に貢献した。

 飛躍のきっかけとなったのは、右打者の内角を攻めるツーシーム。2023年のシーズン途中、ウエスタン・リーグでの再調整を命じた中嶋聡監督から「(その投球では)打者が怖がっていない。もっと内角にツーシームを投げたらどうだ」と指摘された。内角を意識した途端、打者に通用するようになり「これで1軍でも抑えられるという手応えがありました、それが勝てた要因だと思います」と振り返る。

 ただ、今のツーシームも東の中では完成形ではない。「横に曲がるのと、シンカー気味に落ちる2種類」を投げるが、追い求めているのは、打者の近くまで軌道はストレートと変わらず鋭く内角を突くツーシーム。そんな時、山本の助言を聞いた。

「すごい人って、やっぱり感覚で話しておられるので(理解が)難しいですね。由伸さんは食事面に気を使って、ストレッチ1つにしても(みんなと)全然違いますし、他の人とは180度違うようなことをやってらっしゃいます。そういう考えもあるんだな」と、当初はなかなか理解ができなかったという。しかし、思い当たる節もあった。昨年の公式戦でのカットボールが、山本の言う「直球に見える変化球」だった。

128→95→12…「自分自身、10番台を付けることができるとは思いませんでした」

「ロッテ戦だったと思うのですが、1球だけ由伸さんの言われているボールを投げられたんです。気持ちのどこかで『三振を取りたい』『曲げたい』と思ってしまうと、どうしても手首を使ってしまう。できるだけ打者の近くまで真っすぐでいくよう、軌道だけは意識をしてブルペンのマウンドでもストレートのつもりで『曲げない』と思って投げています」

 フォークも山本から教わったが「指が短く握力が弱いので、いつかは投げることができたらいい」と、今は取り組んでいない。「(若月)健矢さんからも『今のツーシームをもっと磨いて、自分のものにしたらいい』とアドバイスをもらっています」と、投球の幅を広げることより武器の完成度を高めることに注力する。

 背番号は「128」から「95」、そして「12」に変わった。「嬉しかったですけど(山下)舜平大が付けていた番号なので複雑ですね。先輩から(譲ってもらった)のとは違いますから(笑)。でも自分自身、10番台を付けることができるとは思いませんでした」

 今季の目標は「最低でも2桁勝利。背番号以上は勝って、負け数を少なくして“貯金”を作りたい」と言い切る。連勝については「昨季は打者の方が打って下さり、楽な気持ちで投げる場面が多かったです。初戦が大事ですね。勝ち負けは結構、運もありますから、運にお願いします」と自然体で臨む。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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