最速156キロが出るようになった理由 支配下目前の“逸材”才木海翔が着手した「ドリル」

オリックス・才木海翔【写真:北野正樹】
オリックス・才木海翔【写真:北野正樹】

オリックス・育成の才木「このままではヤバイ」から遂げた成長

 強い危機感が生んだ記録だった。プロ1年目のオフ、台湾でのウインターリーグに派遣されたオリックスの才木海翔投手は、10試合に登板して、防御率0.00をマークしたまま帰国した。2022年育成ドラフト2位で指名された右腕は「このままではヤバイ……」と背水の陣で戦っている。

「意識をもっと変えないといけないと思いました。高校卒業の育成選手なら5~6年は(球団が)見てくれても、大卒なら2年で戦力外通告を受けることもあります」。そう語る才木が取り組んでいるのが、中垣征一郎巡回ヘッドコーチが指導する「ドリル」だった。ドリルでは体幹を鍛え、体重移動などを反復練習する。新人選手は宮崎春季キャンプで練習方法を教わり、日々の練習でもドリルを取り入れて体に動きを覚え込ませる。

 才木は速球派右腕として評価され、大阪経済大から2023年にオリックスに入団。だが、春季キャンプでハムストリングスを痛め、6月には肩痛で約2か月間、戦列を離れた。ドリルをおろそかにしていたわけでないが、もっと取り組まなければいけないと思ったのがシーズン終了直後だった。育成での契約更新はしてもらえたが、強い危機感が取り組む姿勢を変えるきっかけとなった。

 宮崎でのフェニックス・リーグから真剣に取り組み始めると「肩痛後に140キロ台半ばしか出なかったストレートが152、153キロをコンスタントに出せるようになり、台湾では156キロも何度か出るようになりました」と手応えを感じた。

「ブリブリに投げるしかない」昨年の反省を生かした今

 継続したドリルの取り組みで下半身を強化し、体の上下のバランスを整えたことでスムーズな体重移動ができるようになった。その結果、怪我をしない理想のフォームで最大の出力をボールに乗せることができたという。

 台湾では「NPBレッド」のクローザーとして10試合に登板して5セーブを挙げた。任された10イニングで15奪三振の快投を見せ、防御率は0.00。「押していったストレートを狙われ、安打は7本打たれましたが、0点に抑えてベンチに帰ればいいという気持ちで投げました」と、練習に裏打ちされた気迫の投球を振り返る。

 帰国後もドリルを継続し、強めのキャッチボールで肩を鍛え1月10日過ぎには「もう結構仕上がって、いつでも投げることができます」と状態の良さをアピールする。キャンプでは初日にブルペン入りし、昨秋から取り組んでいるカーブも含め38球。「何も考えずに投げ込むのではなく、しっかりとコースを狙って投げ込みました。去年は、もうブリブリに投げるしかない、みたいな感じでしたけどね」。1年間の成長を、早く結果に出して支配下選手登録につなげたい。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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