戦力外直後に巡ってきた“大谷との対戦” 鷹退団で野球人生一転…果たした両親への恩返し

中国戦に登板した侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】
中国戦に登板した侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】

元ソフトバンクの真砂はWBC中国代表で大谷翔平と対戦

 思わぬ連絡に背筋が伸びた。社会人野球、日立製作所の真砂勇介外野手は昨春に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に中国代表で出場した。ソフトバンクから戦力外通告を受け、新天地が決まった矢先の出来事。「あの経験は一生ものですよね」と感慨深そうに振り返る。

 満員の東京ドーム。打席に立ちマウンドを見ると、同じ1994年生まれの現ドジャース・大谷翔平投手がいた。昨年3月9日、真砂は中国代表の赤いユニホームを着用し、野球日本代表「侍ジャパン」と対戦。「3番・中堅」で出場し、大谷とは初回の第1打席は三ゴロ、2打席目は空振り三振に倒れた。その後、第3打席で2番手・戸郷翔征投手から左翼線へ二塁打を放った。

「ちょいちょい忘れています(笑)。でも、打席に立ったのは事実なので。ヒット打ちたかったなぁ。ヒット打ちたかったです(笑)。打席に立たせてもらえて、ヒット打てていればとは思います」

 ソフトバンクから戦力外通告を受けた後、トライアウトでNPB球団からは声がかからず、2022年11月に社会人野球・日立製作所に入社を決めた。その直後の2023年1月、古巣・ソフトバンクの関係者から一本の電話が鳴った。両親が中国出身で中国代表として出場しないかという依頼だった。

日立製作所・真砂勇介【写真:川村虎大】
日立製作所・真砂勇介【写真:川村虎大】

球団からスタッフ転身の打診「NPBにいたら行っていない」

 ソフトバンクから戦力外を受けた時、球団スタッフへ転身の打診もあった。現役を続行していたからこそ巡ってきた出番。「NPBにいたら(WBCに)行っていないですし、タイミングがいいというか、運がいいなというか。色々な体験させてもらって凄いなと思いました」と振り返る。

 真砂自身も代表から声がかかるまで中国野球について詳しくは知らなかった。大会前の鹿児島でのキャンプでは社会人野球エイジェックに0-16で完敗からのスタート。本戦でもグループBで最下位に終わり、1勝もすることができなかった。

 それでもWBCがきっかけで変わりつつある。昨年10月に中国で行われた杭州アジア大会では、侍ジャパンの社会人代表に中国代表が1-0で勝利。「メンバー見たらほとんど同じで。ネットで見て頑張ってるんやなって。変わってきているんじゃないですかね」と自身が出たことで両親の母国に恩返しできたことはうれしく感じている。

 第6回WBCは2026年に開催される。再び代表選出については「呼ばれないでしょ(笑)。どうですかね。狙っていますとか、そんなんじゃないです。流れとか結構運もあるんで」と笑顔で否定。それでも、大舞台で得た他に代えがたい経験は今に生きている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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