球団との“約束”守ったT-岡田 年俸大幅減も乗り越えて…19年目ベテランが見据える未来

オリックス・T-岡田【写真:北野正樹】
オリックス・T-岡田【写真:北野正樹】

オリックス・T-岡田、オフに“大幅減俸”も今季に自信…「順調ですね」

 明るい笑顔の「Tさん」が戻ってきた。オリックスのT-岡田外野手が、宮崎春季キャンプ終盤の実戦初打席で本塁打を放つなど、開幕へ向け調整を進めている。「慎重にやってますが、順調ですね」。2月9日に36歳の誕生日を迎えた19年目のベテランが言葉を選びながら頬を緩めた。

 万全の対策をとってきた。2022年は春季キャンプ中に右ふくらはぎを痛めて離脱。2023年も1月の自主トレ中に左脇腹を痛め、キャンプインから出遅れた。今回、トレーナー指示の別メニューではなく、通常メニューをこなしたのは3年ぶりのことだ。

 今オフの契約更改では、7200万円から減額制限を大きく超える50%ダウンの3600万円(金額は推定)でサインした。交渉の場で球団から「自主トレから怪我をしないで。それ(怪我)がなかったら勝負できるから。そこに気を付けてキャンプから元気な姿で頑張ってほしいと言われました」と明かしていた。

 大阪・履正社高時代に通算55本塁打を放ち、2005年に高校生ドラフト1巡目でオリックスに指名された。2010年に33本塁打を放って本塁打王に輝き、2017年にも31本塁打を記録した“浪速の轟砲”。しかし、その後は怪我に苦しんだ。2022年は36試合、昨季は20試合出場にとどまり、本塁打を放つことができなかった。

 球団から“約束”された「怪我なく」を実践するため、ほっともっと神戸で行っていた自主トレを今オフは「舞洲」に変更した。「環境を変えてやりたいというの(意図)があって」と話すが、トレーニング器具が充実している球団施設で、怪我をしない体作りを目指すのが目的だった。

 万全の状態で入った春季キャンプでは、打撃復活に向けて取り組んだ。オフに「ガラッと変えますから楽しみにしとって下さい」と話していた打撃フォーム改良は進行中。「自分の中では結構、変えたところはあるんですが、口で説明するのは難しいですね。体の使い方の部分ですね」と説明する。目指すのは確実性だという。「率が上がれば出塁率も上がると思いますし、チームの力にもなれます。確実性が上がれば長打も増えると思います」と好循環をイメージする先にあるのはホームランだ。

プロ19年目のシーズン開幕に「しっかりと良い形で入る」

 打撃フォームを変えることに不安はない。「結果を残すためにどうするのかを考えると、おのずと変化をしていかなければならないんです。ただ、続けるところは続けながら、そのあたりは取捨選択をしながらという難しいところではあるのですが、シンプルに考えています」。どのようにしたら結果が残せるかを突き詰めながら、進化を続ける。

 今季初実戦となった2月25日の台湾・楽天モンキーズ戦では、初打席に右下手投げの高めに浮いたスライダーをライトスタンドに運んだ。幸先の良いソロに「練習から良い打球が出ていましたが、初打席で結果を出せてほっとしています」と安堵の表情を浮かべた。

 ここ数年、長く過ごした2軍生活は「新しいことに取り組める時間でもあったので、全然、無駄ではなかったと思います」と前向きに捉える。若手から「Tさん」と慕われ、アドバイスを求められることも多くなった。

 ボールの見極めに迷っていた同じ左打者で2年目の杉澤龍外野手は「目付けの仕方を教わり低めの変化球に手を出すことが少なくなりました」と感謝する。T-岡田は「僕が分かることであれば、伝えていければと思います。そうすることで、僕自身も勉強になることが多々あると思うので。チームの力になれるなら、聞かれれば自分の分かる範囲で答えたいと思いますね」と目尻を下げる。

 3月3日からは本拠地・京セラドームにDeNAを迎えオープン戦が始まる。「大事なのは今じゃないので。シーズンにしっかりと良い形で入るというのが1番大切。どうやったらゲームで良い結果が出るか、いろいろ考えてやってきました。(数字は)どうなるか分かりませんが、良い結果を出せる準備はしてきました」。19年目のシーズン開幕を、静かに待つ。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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