好打者揃いだからこそ…侍J打線に浮上した意外な課題 専門家指摘「余計打ちづらい」

侍ジャパン・井端弘和監督【写真:小林靖】
侍ジャパン・井端弘和監督【写真:小林靖】

2イニング目に10キロ球速を落とす頭脳派右腕マルティン・シュナイダー

「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本vs欧州代表」第1戦が6日、京セラドームで行われ、日本は5-0で快勝した。しかし、11安打を放った侍打線に思わぬ課題も浮上した。“遅球”対策である。

 日本の打線を翻弄したのは、欧州代表の2番手として2回から登板した38歳の右腕マルティン・シュナイダー投手だった。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもチェコ代表の一員として来日していた男は、先頭の坂倉への初球に、この日最速の130キロのストレートを投じ見逃しのストライクを取ると、その後は110~114キロのスライダーを多投。この回を3者凡退で片付けた。16球中13球がスライダーで、ストレート3球の球速は130キロ、128キロ、123キロに過ぎなかった。

 シュナイダーは2イニング目の3回に入ると、さらに球速を落とした。スライダーは104~107キロで、108キロのチェンジアップも駆使。これには日本屈指の好打者である近藤健介外野手(ソフトバンク)もなかなかタイミングが合わなかったほどだ。

 ところが、好事魔多し。3回1死走者なしで近藤に5球目の104キロのスライダーをファウルされた瞬間、シュナイダーは突然マウンド上でうずくまった。なんと右肩を痛めて緊急降板。1回1/3、23球、打者4人パーフェクトの記録だけが残ったが、あの調子で長いイニングを投げられたら、どれだけ苦戦させられたかわからない雰囲気だった。

 日本の打線はWBCでも、チェコや中国の球の遅い投手を打ちあぐねるシーンがあった。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「普段150キロ以上の球を見慣れているからこそ起こる現象です。100キロ台と言えば、NPBではカーブの球速で、1打席に1球来るか来ないかというくらい。それを多投してくるのですから、急に合わせようとしても、なかなかイメージが湧くものではありません」と説明する。また、「打者には相手投手の一番速い球にタイミングを合わせる習性があります。先頭打者の初球に130キロのストレートを見せられたことで、余計に打ちづらくなった気がします」とも付け加えた。

かつて欧米の打者が日本のアンダースローを打てなかった状況に似ている

 打撃はタイミング次第。野球の難しさの1つがここにありそうだ。

 かつて、国際試合で日本のアンダースローの投手が欧米の打者に強いとされていた時代があった。野口氏は「欧米ではなかなかお目にかかれない投げ方だったからでしょう。最近はだいぶ見慣れてきて、もはや単に下から投げるだけでは通用しませんが、日本にとって遅い球はちょうど、あの頃の欧米の選手にとってのアンダースローに当たるのではないでしょうか」と見る。今後は侍ジャパンにとって“遅球”対策が、結構重要な課題になるかもしれない。

 一方で、野口氏は「近藤、村上(宗隆内野手=ヤクルト)といった国際経験豊富な選手はさすがにうまく対応していましたが、経験の浅い打者は、外国人特有の変化の小さいツーシームに戸惑っていました。課題が残ったと思います」とも指摘する。

 国際大会で好成績が続いている侍ジャパンだが、まだまだ、どこに落とし穴があるかわからない。油断は禁物だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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