侍・大学生を絶賛も…「やってみないとわからない」 専門家があえて指摘する課題

侍ジャパン・西川史礁、中村優斗、金丸夢斗、宗山塁(左から)【写真:小林靖】
侍ジャパン・西川史礁、中村優斗、金丸夢斗、宗山塁(左から)【写真:小林靖】

侍ジャパンで躍動「4人の大学生」を野球評論家・野口寿浩氏が分析

 強烈なインパクトを残した「4人の大学生」は、どう映ったのか。6、7日に京セラドームで行われた「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本vs欧州代表」の2試合では、野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームに抜擢された大学生がそろって強烈な印象を残した。彼らは将来、プロの世界でどんな活躍を見せることになるのか現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。

「今回抜擢された大学生4人は全員、間違いなく今秋のドラフトで1位指名されると思います。それどころか、プロ1年目を迎える前に、今年11月のプレミア12(ラグザスpresents 第3回WBSCプレミア12)で再び侍ジャパンに選出される可能性まである。今回彼らをトップチームで試したのは、井端(弘和)監督のファインプレーだと思います」

 7日の第2戦に先発を任された金丸夢斗投手(関大)は、最速151キロを計測したストレートを軸に、右打者の内角低めに落とすスプリット、スライダーやチェンジアップも駆使する左腕。欧州代表の打線に付け入る隙を与えず、2回を4奪三振でパーフェクトに抑えた。

 金丸の後を受けて3回に登場した最速157キロを誇る中村優斗投手(愛工大)も、1イニングを3人で料理。11球中7球を占めたストレートは全て155キロ以上で、縦のスライダーにはワンバウンドでも相手打者にバットを振らせる落差、切れ味があった。第2戦で侍ジャパンの6投手が“完全試合”を継投で達成したのも、先陣を切った大学生2人が流れをつくった結果と言える。

 一方、前日の第1戦に途中出場し2打数2安打1打点と活躍した西川史礁外野手(みしょう・青学大)は、第2戦に「1番・中堅」でスタメン出場。打撃では初回の投手強襲安打1本だったが、中堅守備で7回にヒット性の飛球をダイビングキャッチ。このプレーがなければ、完全試合達成もなかった。

 驚くべきは、もともと今秋ドラフトの目玉といわれているのが、この3人でなく、本番直前の右肩甲骨骨折判明で出場できなかった宗山塁内野手(明大)だという点である。

「(今秋のドラフトで)左の先発が欲しい球団は金丸を指名するでしょうし、右のパワーピッチャーが欲しい球団は中村に行くでしょう。右打ちの外野手が不足している球団にとっては西川が魅力的ですし、もともと『宗山を獲れれば、ショートは10年間安泰』という評判を聞いています」

最速157キロ・愛工大中村にはリリーバーの適性も「スライダーで空振り取れる」

 金丸については「無理に『オリャー!』と力投するわけではない。それでいてコンスタントに150キロ前後が出ていた。力みがないから、コントロールも安定していた」と絶賛。プロ1年目から先発ローテーションを回れる力量を認めた上で、あえて課題を挙げるなら「大学生は春と秋に集中して試合を行い、夏には公式戦がありませんから、1年間の長丁場を通して活躍できるかどうかは、実際にやってみないとわからない」と指摘した。

「入る球団によっては1年目からエース級の働きを期待されるでしょうが、できれば最初は先発の4~6番手の立場でスタートし、徐々にペースをつかんでいける球団に入る方が、彼の将来のためにベターではないかと思います」

 中村に関しては、リリーバーとしての適性も感じ取った。「157キロの速球以上に、空振りを取れるスライダーが印象的でした」。持ち球にはこの日見せなかったスプリット、カットボールもあり、実力は底知れない。

 一方、大学日本代表の4番を務めた経験もある西川には、「オールマイティな選手。ホームランバッターに育てるために、プロ1年目は打線の下位からスタートさせる手もありますし、この日のように1番に置けば、それなりの出塁率を残すでしょう」と目を細める。「小さくまとまってほしくない。鈴木誠也(外野手=カブス)のような選手になれるのではないかと思います」と期待を込めた。

 走攻守3拍子そろった右投げ左打ちの宗山を含め、今秋のドラフト、さらにはその後に向けてどんな成長を見せてくれるのか、楽しみは増すばかりだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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