佐々木朗希、大トリ契約で「本人がごねてしまった印象を」 米移籍へ問われる真価
今季からフォームを“メジャー流”に微調整
前ロッテ監督で野球評論家の井口資仁氏が、プロ5年目のシーズンに臨む佐々木朗希投手に「タイトル総なめ」の期待を寄せている。佐々木は2019年ドラフトの目玉で、4球団競合の末に当時監督だった井口氏が交渉権を引き当てた。将来を見据えた育成プランに従って育てた右腕は、2022年に28年ぶり史上16人目となる完全試合を達成。今季も先発ローテの軸として期待されている。
「まずは先発ローテを1年間しっかり守ること。最近は2年連続で5月頃に一度、戦列を離れているので、エースとは言い切れない。エースの最低条件は、やはり1年間ローテを守り抜くことですから。今年は若干フォームを変えて、踏み出した左足を少し突っ張って投げるイメージになりました。メジャーの投手に多いタイプですね」
佐々木が将来的にはメジャーでプレーしたい希望を持つことは広く知られるところ。今回のフォームの変化は、日本よりもマウンドが固いメジャーを意識してのことなのか。2005年にホワイトソックス入りする前から、メジャーを意識した守備や打撃に取り組んでいたという井口氏は「それはあるでしょうね」としながら、言葉を続けた。
「ただ、今は日本のどの球場も粘土質の固いマウンドになっているので、投手はメジャーに近い投げ方になってきています。ひと昔前のように、両足をしっかり張りながら大きく柔らかなフォームで投げる感じではなくなっていますよね。今はテークバックを小さくコンパクトに投げるのが投手の主流。まずはメジャーで無駄な動きをなくそうとコンパクトなフォームになっていった流れが、日本にも来ている。オリックスの山下舜平大は元々小さかったテークバックが今年はさらに小さくなり、より球の出どころが見づらくなっていましたね」
微修正を加えたフォームで開幕に臨む佐々木だが、オフには球団との契約更改に時間を要し、意図せぬ形で注目を集めた。球団から契約合意が発表されたのは1月26日のこと。キャンプインが5日後に迫っていただけに、一時は春季キャンプに自費参加の可能性も取り沙汰された。井口氏は一連の“騒動“について「ごねたイメージがついたのは少し残念」と話す。
“騒動”は「残念」も「最終的に目指している場所は明らか」
「朗希が最終的に目指している場所は明らかですが、実際に球団と契約交渉をしているのは代理人であって、朗希が交渉の席についているわけではない。そこで本人がごねているような印象を与えてしまったのは、周囲にいる大人たちのマネジメントが良くなかった。イメージづくりは大事ですから、そこは残念ですよね。
契約完了が1月になるのはよくあること。僕も契約書にサインしたのがキャンプイン直前になったことがありました。1月になると自主トレが始まるので、球団事務所に行く時間がない。だから、キャンプに向けた荷物出しで球場に行く時にサインします、という流れになるわけです」
かつて大谷翔平投手がそうであったように、昨オフの山本由伸投手がそうであったように、快くメジャーへ送り出してもらうためにも、5年目右腕はまず今季、先発ローテを守り抜き、エースとしてチームを悲願の優勝に導きたいところだろう。
「1年を通じてローテを守り、みんなが納得してメジャー行きを後押ししてくれるような成績を残す必要があるでしょう。そして、ロッテが優勝するには、朗希がローテを守り抜くことが必要条件になると思います。それが先発エースとしての役割です。しかも、日本を代表するエースだった山本由伸が移籍した今季は、投手のタイトルを総なめにできるチャンス。圧倒的な成績で沢村賞を獲得できれば、メジャーへの道は大きく拓かれます。由伸が抜けた後、誰が球界を代表するエースになるのか。朗希が出てくるか、舜平大が出てくるか……」
その才能は誰もが認めるところ。メジャー球団も熱視線を注ぐ佐々木だが、今季はその真価が問われるシーズンにもなりそうだ。
【井口資仁氏新刊発売情報】
井口氏が監督退任後、初めてとなる書籍「井口ビジョン」が3月21日に発売される。プロ野球では日本一、メジャーでは世界一を経験し、ロッテ監督としては2025年に常勝球団となるべくチーム再建を図った井口氏は、アマチュア期も含め、どのようなビジョンを持って歩んできたのか。そして、未来に向けて描くビジョンとは……。
■井口ビジョン / 井口資仁(KADOKAWA) 定価:1760円(税込)
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(佐藤直子 / Naoko Sato)