元ドラ1の24歳は「持って生まれたものがある」 覚醒期待…前指揮官の“もどかしさ”

ロッテ・安田尚憲【写真:小池義弘】
ロッテ・安田尚憲【写真:小池義弘】

7年目の安田はオープン戦で奮起「軸となるフォームを掴め」

 昨季はオリックスに15.5ゲーム差をつけられながらも、ソフトバンクに勝率で1毛上回り、リーグ2位となったロッテ。1974年以来となるリーグ1位&日本一を目指す今季は「自分たちを超えてゆく。」をチームスローガンに掲げ、シーズン開幕に向けて準備を続けてきた。

 オフには、2度本塁打王となった前DeNAのネフタリ・ソト内野手を獲得。昨季の本塁打王、グレゴリー・ポランコ外野手とともに打線の核を担うことになるが、頼れる外国人選手の攻撃力を最大限に生かすためにも、日本人野手に期待したいという人がいる。ロッテ前監督で野球評論家の井口資仁氏だ。

 2022年までチームを率いた井口氏は、球団と協力しながら育成にも注力した。数多くの“教え子”たちの中でも特に奮起を期待するのが、今季7年目を迎える安田尚憲内野手だ。

「今年は野手のコンバートがあり、中村奨吾が三塁、藤岡裕大が二塁となったので、安田は一塁をソトと争う形になる。吉井(理人)監督の構想では投手の左右によって2人を使い分けるようですが、そこへ打撃のいいルーキーの上田(希由翔)も入ってくるでしょう。DHはポランコですから、安田にとって勝負の年になりますよ」

 2017年ドラフト1位の安田は、3年目の2020年から1軍に定着。打線の軸となることが期待されたが、キャリアハイは打率.263、9本塁打(いずれも2022年)、55打点(2021年)にとどまっている。殻を破りきれない状況に、もどかしさを感じるファンも多い。24歳内野手が覚醒しきれない要因はどこにあるのだろう。

「シーズンを通して、打撃フォームを1つに固められないことでしょう。もちろん、誰しもフォームは微調整を繰り返しますが、それ以前に自分の軸となるフォームを掴めていないので、才能を生かし切れていない。もう今年で7年目。そろそろ自分の打撃フォームを掴まないと、ポジションがなくなってしまいますから」

 井口氏は監督だった2021年、打撃成績にかかわらず、安田を86試合連続で4番に据えたことがある。もちろん、それは安田の将来性を買っての起用であり、今でも秘める能力の高さは認めるところだ。

「昨季もたびたび良い場面で打っていたように勝負強さを持っています。そういう集中力を1年間、しっかり持つことができれば、ある程度はいい打撃ができると思うんですよね。彼には持って生まれたものがありますから」

 24歳とはいえ、プロ7年目となれば“若手”のカテゴリーではなくなるだろう。安田自身、置かれた立場に危機感を覚えているのか、オープン戦で猛アピール。期待の打撃で信頼を勝ち取っていきたい。

ロッテ前監督・井口資仁氏【写真:舛元清香】
ロッテ前監督・井口資仁氏【写真:舛元清香】

2020年ドラフト2位の中森「朗希に続く高校生投手という期待」

 もう1人、井口氏が期待していたのが藤原恭大外野手だ。オフには2年連続でレッドソックスの吉田正尚外野手と沖縄で自主トレに励んだ。メジャーでも技術とパワーを持ち合わせる打撃が高く評価される吉田から、多くの学びを得た様子だったという。

「キャンプで見た時、恭大はかなり体が大きくなって、いつもと違う感じでしたよ。正尚からトレーニング方法についてしっかり学んできたようです。自主トレで何に力を入れたのか聞いたら、すかさず『筋トレです!』と答えていましたから。恭大の場合、走攻守揃っているから、首脳陣としては使いやすい選手。3割とは言わないまでも2割7、8分打って、しっかり走って、どれだけチームのためのプレーができるか。オープン戦で成績を残して、監督の信頼を勝ち取りたいところでしたが……」

 残念ながら、10日のソフトバンク戦で自打球を当てて右膝蓋骨を骨折。復帰までしばらく時間がかかりそうだが、まずは怪我の回復に努めたい。

 一方の投手陣では、4年目の中森俊介のブレイクに期待しているという。2020年ドラフトで2位指名された右腕は、150キロを超えるストレートとチェンジアップの緩急を使った投球に長け、1軍デビューした昨季は主に中継ぎで13試合に登板し、3勝2敗、防御率3.54の成績だった。

「今季は中森の状態が良さそうに見えましたね。ドラフトでは前年の(佐々木)朗希に続く高校生投手という期待を持って指名しました。怪我などもあって少し遅れましたが、マウンド度胸のある投手。自信満々でドッシリと投げる姿がいい。球種はそこまで多い方ではありませんが、ストライクゾーンの中に投げられるようになってきたので、オープン戦でイニングを伸ばしながら、先発ローテ入りに名乗りをあげたいところです」

 16日のオリックス戦では2番手としてマウンドに上がり、3回を1安打無失点に抑えた。昨年11月にはオーストラリアのウインターリーグに参加し、経験を積んだ中森。開幕ローテ入りを果たし、今季はさらに成長した姿を見せていきたい。

【井口資仁氏新刊発売情報】
井口氏が監督退任後、初めてとなる書籍「井口ビジョン」が3月21日に発売される。プロ野球では日本一、メジャーでは世界一を経験し、ロッテ監督としては2025年に常勝球団となるべくチーム再建を図った井口氏は、アマチュア期も含め、どのようなビジョンを持って歩んできたのか。そして、未来に向けて描くビジョンとは……。

■井口ビジョン / 井口資仁(KADOKAWA) 定価:1760円(税込)
詳細は→ https://www.kadokawa.co.jp/product/322307000502/

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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