6四死球でも…直球は「高校生レベルを超えている」 “江川2世”、乱調でも変わらぬ評価
中学時代から騒がれた逸材…昨秋関東大会、明治神宮大会で快投
“江川2世”の春が終わった。第96回選抜高校野球大会は22日、作新学院(栃木)が神村学園(鹿児島)との1回戦に3-6で敗れた。先発したプロ注目のエース・小川哲平投手(3年)は5回4失点で降板。本来の姿ではなかったが、バックネット裏から見つめたNPBのスカウトは評価を変えなかった。
最速147キロを誇る小川哲は初回から味方のエラーや四球などで2死満塁のピンチを招いた。無失点に抑えたが、2回に死球などで2死一、三塁を背負い、2番の増田有紀内野手(3年)に左翼線へ先制適時二塁打を許す。3回には4番の正林輝大外野手(3年)に、右翼ポール際へ大会第2号となるソロ本塁打を浴びた。
その後も制球に苦しみ、結局5回99球、5安打6四死球(5四球・1死球)4失点(自責点3)で降板。味方打線は6回と7回に反撃したが、序盤のビハインドをひっくり返すことはできず、明治神宮大会準優勝校が初戦で姿を消した。
小針崇宏監督は試合前、小川哲について「バロメーターはストレート」と見ていた。それが、球速こそ140キロ台中盤をマークしていたものの、コントロールに課題を残した。指揮官の「7回で100球くらい」という計算は崩れた。小川自身も、想像とはかけ離れた結果に「1番を背負っている以上は、1点も取られてはいけない。まだまだ自分に甘さがあります」とうなだれた。
中3で144キロをマークし、入学前から注目を集めていた。作新学院でも、昨秋の関東大会で計14回を自責点0に抑え、チームを優勝に導いた。続く明治神宮大会でも、3試合で18回1失点の快投を演じ準優勝投手に。かつて“怪物”の異名を取った作新学院の大先輩にちなんで、「江川卓2世」と呼ぶ声も上がった。
西武・潮崎哲也スカウトディレクター「高校生レベルを超えたものがある」
今大会は満足のいく投球に程遠かったが、183センチ、92キロの恵まれた体格に秘められた潜在能力に対し、プロの評価は変わらない。
昨秋の関東大会、明治神宮大会の快投を直に見ていた巨人・大場豊千スカウト部主任は「理由はわかりませんが、別人のような投球でした。上司には『本来はこんなものではありません』と言いました」と苦笑。「腕のしなり、フォームのバランスがよく、ストレートに角度があります。普段はコントロールもいい。将来が楽しみな投手であることに変わりはありません」と評価を下げるつもりはない。
西武の潮崎哲也スカウトディレクターも「“エンジン”が大きいのは魅力。ストレートの球筋は高校生レベルを超えたものがある。歯車が噛み合えば、ぐっと良くなる可能性があります。追いかけ続けていくべき投手だと思いますよ」と見ている。プロの目には結果とは別の魅力が映っていた。
小川哲は「9回まで投げ切ることが使命だと思います。今のままでは普通の投手で終わってしまう。もっと成長しないといけないと感じました」と危機感を露わにし、リベンジを誓った。夏、再び成長した姿を見せ、信頼を取り戻す。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)