オドーアは「対応できないタイプ」 退団でも巨人に影響なし…専門家期待、カギ握る1番打者
ヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野口寿浩氏分析
2024年のセ・リーグは、昨季日本一の阪神がオープン戦3勝14敗1分で12球団中最下位と振るわず、波乱含みの様相も呈している。昨季は2位に11.5ゲーム差をつけて独走したが、今季は勢力図に変化があるのか――。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が予想した。
阪神はオープン戦期間最終盤に、リードオフマンの近本光司外野手、昨季全143試合で4番を張った大山悠輔内野手の欠場が続いた。「この時期の勝ち負けは、さほど気にする必要はありませんが、近本と大山は替えのきかない選手だけに、状態が気がかりです」と指摘する。
それでも昨季両リーグを通じてトップのチーム防御率2.66を誇った投手陣は健在。「オープン戦で悪いものがたくさん出た方が、素直に反省できる。開幕してスイッチが入れば、いい方向に向かうと思います」と優勝の予想は揺らがなかった。
「今年はセ、パともに混戦模様で、順位予想は本当に難しい」と野口氏。特にセの2、3、4位は「どのチームにもいいところがあるが、決め手はない」と頭を悩ませた。
その中で、2位に推したのがDeNAだ。「昨季10勝を挙げた(トレバー・)バウアー(投手)、7勝の今永(昇太投手=現カブス)が抜けた穴はあまりにも大きいと言われていましたし、僕自身もそう見ていました。キャンプイン前までは5位に予想するつもりでした。しかし、オープン戦で投手陣の頑張りを見て、Aクラスに入ってくるかもしれないと考え直しました」と述懐する。
開幕投手の東克樹投手を筆頭に、新外国人アンドレ・ジャクソン投手、オリックスから移籍した中川颯投手らを含め、先発ローテを担う投手がオープン戦で好投。光明が差してきた。
そして野手陣では、ドラフト1位ルーキーの度会隆輝外野手(ENEOS)が“オープン戦首位打者”の打率.434(53打数23安打)、同4位の石上泰輝内野手(東洋大出身)が.327(49打数16安打)と躍動した。野口氏は「もともと打線がよかった上に、度会と石上が入り、佐野(恵太外野手)、牧(秀悟内野手)、宮崎(敏郎内野手)、(タイラー・)オースティン(外野手)と合わせて、主軸が4人から6人になりました。相手のバッテリーにとっては大変な脅威です」と述べた。
阿部巨人1年目の鍵を握るのは新人リードオフマン
阿部慎之助監督1年目の巨人では、オープン戦打率.400(45打数18安打)のドラフト3位ルーキー・佐々木俊輔外野手(日立製作所)を「目玉」と見ている。当面は1番を打つことが多そうで、「オープン戦のようにヒットがたくさん出れば一番いいですが、四球を含めて、どれだけ出塁できるかがチームにとって重要です」と強調する。
野口氏は巨人の浮沈の鍵を、「4番の岡本(和真内野手)が孤立させないこと。1〜3番の出塁率と、5番を打つベテランの坂本(勇人内野手)がどれだけ試合に出て、岡本をカバーできるか」と見ているのだ。
メジャー通算178本塁打を誇る新外国人ルーグネット・オドーア外野手が、開幕直前に電撃退団したのは衝撃的だったが、野口氏は「もともと僕はオドーアに関しては、低めの変化球の制球がいい日本の投手には対応できないタイプの打者と見ていました」と言う。「巨人はキャンプ、オープン戦を通じて外野手がすごくいい争いをしてきました。そういう選手を我慢して起用した方が、チームにとって有益だと思います」と、むしろプラスに働くと見ている。佐々木をはじめ、浅野翔吾外野手、萩尾匡也外野手、松原聖弥外野手らの成長に期待したいところだ。
一方、昨季チームの“アキレス腱”となった中継ぎ陣は、阪神から現役ドラフトで獲得した馬場皐輔投手が開幕2軍スタートとなるなど、現時点で“弱点解消”とはいかなかった。それでも新人や若手の活躍を期待し、3年ぶりのAクラスとなる3位に入ると予想した。
昨季2位の広島を4位とした理由は、「長打を期待できるのは、成長株の田村(俊介外野手)くらい」という打線の構成にある。主軸の西川龍馬外野手がFAでオリックスへ流出し、新外国人のジェイク・シャイナー内野手、マット・レイノルズ内野手はいずれもオープン戦打率1割台に終わった。
広島・新井監督「若手の成長に手応えがあるという意味では、自信がある」
ただ、野口氏が2月下旬、沖縄キャンプ中の広島の新井貴浩監督を取材した際には「自信がありそうに見えた」という。「単刀直入に『今年、自信あるだろう?』と聞くと、『どうですかね……。若手の成長に手応えがあるという意味では、自信があります』と言っていました」と明かす。田村、久保修外野手、二俣翔一外野手ら、躍進を期待される若手が多く、野口氏も「彼らの成長次第では優勝争いに絡んでいく可能性もある」と目を離せない。
2年連続最下位の中日は、昨季リーグ2位のチーム防御率3.08をマークした投手陣が相変わらず強力。対照的に打線は、「このチームの“永遠のテーマ”は得点力」と指摘する通りだ。通算303本塁打の中田翔内野手(前巨人)の加入は間違いなくプラスだが、「一気にAクラス争いまでチームを押し上げられるかというと、疑問符がつく」と言う。主力の岡林勇希外野手が右肩の炎症で開幕2軍スタートとなったのは痛い。1歩前進の5位予想となった。
野口氏にとって、現役捕手としてもコーチとしても在籍したヤクルトを最下位に予想しなければならないのは、忸怩たる思いがある。「景気のいい話をしたいのは山々ですが、投手陣が駒不足で、どうしても上位に推せない」と胸の内を明かす。もともと開幕投手の筆頭候補だった小川泰弘投手、奥川恭伸投手も開幕に間に合わなかった。
それでも「予想順位のまるっきり逆もありうるのが、今シーズンです。ヤクルトも小川、奥川が意外に早く1軍に復帰できて、勢いに乗ったらわかりません」と期待を寄せた。下位予想のチームにも、混戦に活路を見出す望みがある。
【順位一覧】
1位 阪神
2位 DeNA
3位 巨人
4位 広島
5位 中日
6位 ヤクルト
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)