巨人首脳陣がドラ1右腕に“勝利の方程式”を任せる理由 155キロ速球だけではない強み

阪神戦に登板した巨人・西舘勇陽【写真:矢口亨】
阪神戦に登板した巨人・西舘勇陽【写真:矢口亨】

杉内投手チーフコーチ「今日は手汗MAXだったのではないか」

■巨人 5ー0 阪神(30日・東京ドーム)

 ドラフト1位ルーキーはやはり、ただ者ではない。就任1年目の阿部慎之助監督が率いる巨人は、昨季6勝18敗1分と大きく負け越した阪神と開幕カードでぶつかったが、苦手意識を一掃する連勝スタート。立役者の1人が、新人にして“勝利の方程式”の7回を任せられた西舘勇陽投手だ。

「勝ちパターンの7回に行くことは、本人もわかっているはず。それが彼の役割ですから」。阿部監督は中大の後輩でもある西舘に、全幅の信頼を示した。

 29日の開幕戦では、3-0とリードして迎えた7回頭からプロ初登板し、3人で片付けた。翌30日も同じく3点リードの7回だったが、先発のフォスター・グリフィン投手が1死一、三塁のピンチを招いた後を受け、イニングの途中から重圧のかかる場面での登板となった。

 まずは代打・糸原健斗内野手にカウントを3-1としたが、内角低めのカットボールで難なくストライクを取ると、続く6球目に150キロを計測した高めのストレートでバットを押し込み、浅い左飛に打ち取って三塁走者の生還を許さなかった。

 西舘は「(カウント3-1でも)四球のイメージは湧かなかった。ゾーン内に自分のボールを投げれば、最悪でもファウルを稼げると思っていました。自分としてはカウントを取るには、ストレートよりカットボールの方が投げやすいです」と自信に満ちていた。

 続く近本光司外野手には、外角高めのカットボールを右翼フェンスギリギリまで飛ばされるも、打球は無事に松原聖弥外野手のグラブに収まり、無失点のままピンチを脱した。

 超高速クイック、最速155キロのストレートなど特長を持つ右腕だが、重要な役割を託される一番の理由は、安定した制球力にありそうだ。いつ四球を出すかわからない投手に、ここ一番のリリーフは任せられない。杉内俊哉投手チーフコーチは「そうだね。ストレートの勢いもそうだけれど、ストライクをちゃんと取ってくれるところですね」とうなずいた。そして新人離れしたマウンド度胸を示す姿に、「緊張しているようには見えないけれど、あいつもだいぶ緊張していると思う。緊張すると手汗をかくと言っていたから、今日は手汗MAXだったのではないですか」と笑った。

開幕3戦目はベンチ外も「せっかくなのでトレーニングをやりたい」

 開幕から2試合連続で役割を果たした西舘は「厳しい場面、周りのすごい声援の中で投げられたことは、これからやっていく上で落ち着きにつながると思います。経験できてよかった」と大きな手応えを得た。とはいえ、新人に過度の負担を強いるわけにはいかず、杉内コーチは開幕3戦目の31日には西舘をベンチから外すことを明言した。

 気持ちよく、束の間の休暇を楽しめるだろうと思いきや、西舘は「今日(30日)も試合後にウエートトレーニングをやりましたし、明日もやらないといけない。中継ぎは試合で投げ続けないといけないので、トレーニングの時間をなかなか取れない。せっかくなので、明日じっくりやれればと思います」。気を緩める素振りもなかった。

 阿部巨人の“勝利の方程式”は当面、7回を西舘、8回を左腕・中川皓太投手、9回を守護神・大勢投手に任せるパターンを基本線に、点差や疲労度に応じて変化をつけていく。チームの浮沈に関わる生命線となりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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