打率1割台…佐藤輝明は「悪いパターン」 明らかになった弱点、専門家が危惧する“悪循環”
野球評論家・中尾孝義氏が阪神の不振を分析
猛虎が苦しんでいる。昨季日本一に輝いた阪神は今季6勝8敗1分の“借金2”(15日現在、以下同)。特に打線は、チーム打率.206、1試合平均2.4得点がいずれもリーグワーストと奮わない。現役時代に中日、巨人、西武で捕手として活躍し、引退後岡田彰布監督の“第1次政権”時代に阪神2軍コーチ(2004~2006年)を務めた野球評論家・中尾孝義氏が、不振の背景を分析した。
「阪神は昨年、あれだけ打って優勝した。他球団がシーズンオフに研究を重ねたのは当然で、こういう攻め方をすればある程度抑えられるというのが、頭に入っているはずです。あとは投手が狙い通りに投げられれば高い確率で抑えられるし、投げ損なえば打たれるというのが現状です」
阪神の昨季日本一は、強力投手陣の貢献度が高かったが、打線もリーグトップの555得点を稼ぐなど破壊力があった。しかし今季は、昨季全143試合で4番を張り、最高出塁率(.403)のタイトルを獲得した大山悠輔内野手が打率.167で、出塁率も.250。佐藤輝明内野手も打率.196。森下翔太外野手はリーグトップの3本塁打を放つも、打率.157と主軸が低迷している。
岡田監督は14日の中日戦で、4番の大山と5番の佐藤輝を入れ替え、3番を打つことが多かった森下翔太外野手は7番に下げ、1番に木浪聖也内野手、2番に梅野隆太郎捕手、3番に近本光司外野手、8番に中野拓夢内野手を置くという打線の組み替えを断行。しかし4安打2得点で、効果てきめんとはいかなかった。
佐藤輝について、中尾氏は“捕手目線”で「もともと低めの球が好きな打者で、高めの速球には遅れ、ストライクからボールになる低めの変化球にはバットが止まらず振ってしまうという、悪いパターンにはまってしまいがち。佐藤輝の調子自体もあまり良くないので、現状では相手投手はどんどんそこに投げてくるでしょう」と見ている。
「下半身主導でボールをとらえにいくことができれば変わってくる」
「佐藤輝は股関節を使えていない。当たる当たらない以前に、下半身主導でボールをとらえにいくことができるようになれば、低めを見逃せるようになり、そうなれば、相手の攻め方も変わってくると思います」とエールを送る。
中尾氏の目には、大山も「穴の多い打者」、森下も「体の開きが早く、引っ張った打球は、とらえたと思ってもファウルになりやすい」と映る。相手に徹底的に弱点を研究されたことが苦戦の要因と見る。「現状では、(シェルドン・)ノイジー(外野手)の方が、素直にバットが出ていて状態がいいのではないか」と付け加えた。
チームは今季5カードを消化し、1勝2敗が3回、2勝1敗が1回、1勝1敗1分が1回。中尾氏は「岡田監督はおそらく、最悪でも2勝1敗ペースの青写真を描いていたのではないかと思います」とした上で、「幸い、投手陣はそろっている。当分は最悪でも1勝2敗、3連戦でに3タテを食らわないことが優勝争いに生き残る条件だと思います」と予測する。
“打率1割トリオ”が昨季並みかそれ以上の打棒を取り戻し、チームを上昇気流に乗せることができるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)