阪神でもオリでも戦力外…よぎった現役引退 崖っぷちの29歳が目指す“3度目の正直”

オリックス・小野泰己【写真:北野正樹】
オリックス・小野泰己【写真:北野正樹】

オリックス・小野泰己、育成再契約は「ものすごくありがたかった」

 崖っぷちから這い上がる。オリックス・小野泰己投手が支配下選手登録に向け地歩を固めている。昨オフに2年連続での戦力外通告を受け「ここまで積み上げてきたものがこんな形で終わるのかという思いはありました」。いつも通り柔和な表情で受け答えをするが、その目は笑っていなかった。

 小野は2016年ドラフト2位で阪神に入団。プロ2年目には7勝を挙げたが右肘の故障などで救援に転向後は白星がなく、2022年シーズン終了後に戦力外通告を受けた。2023年から育成選手としてオリックスに入団。昨年4月に支配下選手登録されたが、故障で再び育成選手登録に戻ってしまった。

 2年連続で受けた戦力外通告。覚悟はできていた。ウエスタン・リーグ最終戦から6日後だった昨年10月4日、社会人との練習試合に2番手として登板。2死を取った後、3人目の打者への2球目を投げた時、左脇腹を痛めて緊急降板した。

「(脇腹を)やった時は、落ち込んだというか。『もったいないな』でした。ここまで積み上げてきたものがこんな形で終わるのかという思いはありました」。球団が来季の戦力として選手をふるいにかける時期だけに、現役引退も頭をよぎったという。育成選手での再契約を打診され「ものすごくありがたかったです」と感謝する。

 地道に積み上げてきたものがあった。昨年7月末からサイドスローに転向し、2軍戦3試合で3回を1安打6奪三振、無四球無失点。課題とされてきた制球難も影を潜め「新しい小野」に生まれ変わった。8月以降、1軍で2試合に登板し好投したものの中継ぎ陣は充実しており、以後は2軍でフォーム固めに専念していた。

紆余曲折を経て迎えたプロ8年目にかける思い

 練習試合で崩れてしまった「来季は1軍で」という思いをリハビリ中の支えに、今春のキャンプ最終日にブルペン入りし、約20球だが本格的な投球を再開した。3月10日の教育リーグで実戦復帰。3月23日の阪神とのオープン戦にも登板し、復活した姿を阪神ファンにも披露することができた。

「もう違和感はありません」というサイドスローで、4月7日のウエスタン・リーグ、ハヤテ戦では最速153キロをマークし、1回を無安打無失点。2三振を奪い、高めのストレートで3球三振に仕留める攻めの投球も見せた。支配下選手登録復帰へ猛アピールを見せた。

「ブルペンで投げられている良いボールを、試合の中でどう投げるか。再現性と修正力ですね」。紆余曲折を経て迎えたプロ8年目。静かな口調に覚悟が込められていた。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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