「僕主導だったんですが…」 自信満々に首振り「これだ!」、若月健矢が感じた東晃平の“進化”

オリックス・東晃平(左)と若月健矢【写真:北野正樹、荒川祐史】
オリックス・東晃平(左)と若月健矢【写真:北野正樹、荒川祐史】

伸びしろたっぷり育成出身24歳の成長を若月が“証言”

 息が合っているばかりが、良いバッテリーとは言えない。捕手の出したサインに首を振り、配球を自ら考えることでコミュニケーションが深まり、投手の成長にもつながる。オリックス・若月健矢捕手は「1度、サインがかみ合わずプレートを外したんです。昨年までは、僕主導だったんですが」と目を細めるのは東晃平投手の成長だった。

 言葉とは裏腹にうれしそうに振り返ったのは、4月4日の西武戦(ベルーナドーム)での試合後だった。2-0で迎えた7回裏。先発の東が先頭打者・コルデロを4球でカウント2-2と追い込んだ場面だった。若月からの5球目のサインに首を振ること4度。最後はプレートを外して仕切り直した。5球目は外角低めへの141キロのツーシームでファウルを取り、6球目も同じようなコースに142キロのツーシームで攻め一ゴロに仕留めた。

「先頭バッターなので、打ち取りたいという思いが強かったですね。追い込んでから振ってくるような感覚があり、ツーシーム系で三振が取れると思ったんです。自分の中で、ツーシームと決めていたんで、(サインが)出るまで首を振り続けました。5球目のファウルが良いところに投げられたので、最後も同じサインが出たんだと思います」

 首を振った東だが「ほかの場面では基本、僕の考えと一致していました。『これだ!』というサインが出ていましたから抑えることができました」と若月のリードに感謝することを忘れなかった。もちろん、若月に異論はない。「結果的に打ち取っていますし、今年は『こうなったら、こうしたいですね』など、自分の思っていることを言ってくれるようになりましたね」と自主性が芽生えたことを心から喜ぶ。

 東も「ずっとケンヤさん(若月)と組ませていただいて、自分の意見が言いやすくなったということがあるかもしれません。なんとなく『こうしたい』ではなく『次のバッターはこうしましょうか』とか『次の回はこうしましょう』『今のボールはどうでしたか』などと相談できるようになりました」と振り返る。

 投手と捕手のコミュニケーションが深まることで“共同作業”がより一層の効果を挙げることにつながる。今季はここまで4試合に登板して1勝2敗、防御率1.35。黒星が先行しているが、接戦が目立つ。リーグ4連覇に向け、心強い連携が生まれている証だ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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