乱調で2軍調整に「申し訳なかった」 山下舜平大が感じた“成長痛”「またこれか」

オリックス・山下舜平大【写真:北野正樹】
オリックス・山下舜平大【写真:北野正樹】

2軍調整中の山下「早く(1軍で)投げたい。焦りはあります」

 久々に笑顔が戻ってきた。2軍調整中のオリックス・山下舜平大投手が、明るい表情で汗を流している。じっくりと練習に打ち込んだ後には「単純に、リズムよくラインを出しながら投げるようにやっています。あまり深い意味はありませんよ」。中垣征一郎巡回ヘッドコーチの指導を受けながらネットスローを繰り返す狙いを説明した。

「単純」「深い意味はない」という言葉に、復調への“ヒント”が隠されていた。今季開幕2カード目の4月3日西武戦(ベルーナドーム)でスタートしたプロ4年目のシーズン。被安打は2ながら、8四死球と制球に苦しみながらも5回2失点。先発として最低限の仕事は果たした。

 登板2戦目の4月11日楽天戦(京セラドーム)では5回7安打1失点(自責0)。粘りの投球で踏ん張ったが「ボール球が完全なボールになっていますし、まだまだですね」と中嶋聡監督が評価したように、本来の状態からは遠かった。不調は登板3戦目の4月19日のソフトバンク戦(PayPayドーム)でも改善されず、4回で8安打を許して8失点。翌日4月20日に出場選手登録を抹消された。

「何も問題はありません」とチーム関係者が言うように、怪我や故障での2軍降格ではなく、原因はわかっている。だからこそ、復調への調整はシンプルとなる。本来の投げ方ができるように、ひたすらネットスローを行い、感覚を取り戻す作業を続ける。

「早く(1軍で)投げたい、チームの勝利に貢献したいと思います。焦りはあります」と吐露するが、表情に暗さは感じさせない。その理由は、過去にも通ってきた道だからだ。「そういう時期と言えばそれまでなのですが、オフシーズンもトレーニングをやっていると(フォームに)多少のズレは出てくるんです。自分の場合、ちょっとしたズレが末端では大きくなってしまっています。高校の時もそうでした。こうなると思って(練習を)やっていないので大変ですけれど、経験してきていますから『また、これか』という感じなんです」

「ファームに落ちて、こんな時間を過ごすとは思いませんでした」

 福岡大大濠高時代も、もがき苦しんだ。「(高校時代)153キロを出す前なんですが、球速も出ないしコントロールも定まらない時があったんです。トレーニングをした反動だったと思うんですが、今はこの時と似ていると感じます」と振り返る。

「現状維持でいいとは考えていないですし、もっと良くなると思ってトレーニングをやってきました。でも、トレーニングした分、球速が上がって、投げた分だけ良い投げ方になるなら、みんな簡単に160キロを出せます。そこが難しいところなんです。こういうことがあって、考えてやるようになることがいいと思います。変化があるということは寄り道ではなく、変わるということなので、そこはプラスに考えています」

 唯一、表情が曇ったのはチームとファンへの思いだった。「あんなピッチングをしていてはダメです。先輩たちが打って点を取ってくれたのに、その分をすぐに取られてしまって。ファンは勝つ試合を観に来てくださっていますから、面白くないでしょう。申し訳なかったと思います」。

 プロ2年目に体の成長に伴う腰痛で長く戦列を離れたことがある。「成長の過程には、こんなこともあるんだなと思っています。こういう時期にもう少し工夫をしていければ、もっと強くなれると思います。進化のための“成長痛”ですね」。

 逸材のコンディション向上を温かく見守る厚澤和幸投手コーチは「一言でいえば、スケールが大きいのにこじんまりと全部が小さくなってしまい、昨年のパフォーマンスが出しきれていないというように見えます。あんなに四球を出す投手ではありません。四球を出すということは、同じ動きができていないということです。それに尽きます。本人が昨年の感覚を取り戻したら早いんです。そんなに時間はかかりません」と、復調を静かに待つ。

 21歳右腕は「ファームに落ちて、こんな時間を過ごすとは思いませんでした。シーズンを通して結果を出すという目標は果たせていませんが、早く戻ってチームに貢献したいと思います」。5月3日のウエスタン・リーグ広島戦では5回5安打、2失点。4四球と制球に課題は残したが、ゾーンで勝負することができた。明るい日差しは確実に差し込みつつある。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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