吉田輝星、進化の途中で感じる「充実」 コーチが求める“自覚”…「しっかりしなきゃ」の決意

オリックス・吉田輝星【写真:小池義弘】
オリックス・吉田輝星【写真:小池義弘】

オリックス・吉田輝星、貪欲に理想の投球動作を追い求める

 確実に進化を続けている実感がある。昨オフに日本ハムからオリックスに移籍した吉田輝星投手が復活への手応えを感じ取っている。「これからどんどん(調子が)上がっていくような取り組みができているので、充実しています」。今季開幕から1か月を過ぎ、表情と口調に自信がみなぎってきた。

 4月は登板10試合で3ホールドを記録した。4月20日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、延長11回に2死満塁、カウント3-2のサヨナラのピンチをしのいだ古田島成龍投手からバトンを受け取り、3-3の延長12回から登板。先頭の周東をストレート3球で空振り三振に。ウォーカーも3球目のスライダーで三ゴロに仕留め、柳田には初球、内角への146キロ直球でストライクを取ると4球連続してフォークで攻め、最後は一ゴロに打ち取った。

 11球で3つのアウトを奪い、引き分けに持ち込んだ。ただ、意外にもベストピッチングではなかったという。「感覚は良かったのですが、合格点にいくまでの完成度からいえば、それほどの出来ではありませんでした。あの日は、立ち方が崩れているなと思い始めた時期でパッと綺麗に立とうと練習してきたことが、たまたまできたんです」と説明する。

 厚澤和幸投手コーチは「前日の試合(4月19日)で1失点しており、しっかりしなきゃという気持ちが一層、強くなると思って(吉田)輝星に最後を託しました」と話す。春季キャンプ中から「輝星はすごい戦力になります」と明言してきた厚澤コーチの期待にも応える好投だっだ。

 常に自分と向き合い、貪欲に理想の投球動作を追い求める。2023年12月には鹿屋体育大の施設で投球フォームの動作測定などでフォーム修正の重要性を学び、オリックスに移籍後の春季キャンプでは新たに提案された体重移動を迷わず取り入れた。

吉田輝星に芽生える、強い自覚と責任感

 今、意識していることは好不調の波を少なくすること。「まだ、2月から始めたばかり。野球以外にもあると思うんですけど、自分ではできていると思っていてもできていないことがあります。教えてもらったことを自分なりに頭で理解することはできているので、あとは自分の感覚に少しずつ変換しながら、早く自分のものにしていく必要があります」。そのための解決策が傾向と対策だという。

「こういうミスが多くなるとか、こういう時にこういう球がいくということが自分で掴めてこれば、調子の落ち幅が小さくなったり、落ちる期間が短くなったりしてくると思います。抑えたからいいのではなく、自分の感覚をしっかりと覚えて再現性を高めていきたい」と冷静に足元を見つめる。

 4月に登板した10試合の防御率は6.75。救援投手としては誇れる数字ではないが、日本ハム戦(自責点5)を除く8試合の自責点は2。古巣との対戦が大きく足を引っ張っている形だ。「日本ハム戦だけはとんでもない防御率を残しているので改善しなければいけません」と首をすくめた。

 4月27日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では0-5と5点ビハインドの8回から登板し、打者8人に4安打を許し4失点。「ブルペンから動きがおかしいなと思っていて、(点差があって)考えるゆとりがある場面だったので『調子が悪いな』と考えてしまって。日本ハム戦は2試合ともそういう感じでした。決めにいったときに力が入ってもタイミングをずらさず、無駄なく力めるようにするのが今の一番の課題です」と打ち明ける。

 日本ハム時代の2022年、主に救援で51試合に登板。しかし、翌2023年は3試合登板にとどまった。「前の年がよかっただけに、去年ほど1軍にいたいと思ったことはありませんでした。今年は去年みたいなことにならないように、体はきついですが中垣さん(征一郎巡回ヘッドコーチ)に教わったトレーニングを継続していきます」。落とせない試合が続く中、強い自覚と責任感でマウンドに上がる。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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