GG賞→2軍…レギュラー剥奪も「野球は楽しい」 福田周平が“定位置”に戻れた理由
昨年は36試合の出場に終わった福田周平、今季は1番打者としてチームを牽引する
オリックスの“切り込み隊長”が再び戻ってきた。どん底に落ちた昨年から「定位置」を取り戻したのが、福田周平外野手だ。「去年の悔しさが今、生きていることはないですね」。一喜一憂することなく、冷静に自らを分析する。元リーディングヒッターの逆襲が始まった。
福田は2021年から1番に定着。リーグ制覇に貢献すると、翌2022年には外野手転向2年目にしてゴールデン・グラブ賞を獲得した。このまま、常勝軍団のトップバッターとして大きな期待を受けていたが、昨季は若手の台頭や成績不振もあり36試合の出場で打率.191と低迷。オフには広島から同じ右投げ左打ちの外野手・西川龍馬がFA移籍し、競争は激化した。
シーズン開幕前の外野布陣は新加入の西川、中川圭太の2枚は確定と見られており、残り1枠を杉本裕太郎、来田涼斗、野口智哉、廣岡大志らと争う形に。わずか1年で自身の立ち位置が、激変するも本人は至って冷静だった。
「反骨心じゃないですが、それをモチベーションにするといつまで続くのかって思うんですよ。それって浅いというか、多分すぐに終わってしまう。僕はそこを原動力にしていないんです」
腐ることない原動力は「一番は野球が楽しい」「なんでも成功してしまう正解があったら怖い」
プロ野球界は毎年のように有望選手が入り、その分だけ球団を去る選手がいる。競争の中で生き抜くためには、必ずそれだけの理由がある。背番号「1」にはライバルとの競争に勝つ、強靭なメンタルを持ち合わせている。腐ることなく前を向き続ける原動力はどこにあるのか?
「一番は野球が楽しいからです。結果ばっかり出ていたら面白くないじゃないですか? 毎日、いつでも上手くいくなら野球を辞めるんじゃないですか。なんでも成功してしまう世界があったら怖い。打撃に関しても打てることもあるし打てないこともある。どっちも成長することがある。特に打てない時のほうが、技術的にも『こういう風になっているな』って認識できる」
がむしゃらに白球を追いかけるプレースタイルは、時に“凡ミス”も引き起こす。今季初の4連敗を喫した、5月3日の日本ハム戦では8回の好機で二直に飛び出し、併殺に終わり中嶋監督から「ありえない」と名指しで檄を送られた。
自らのミスを反省しつつも、立ち止まっている暇はない。開幕から1か月はケガ人が続出するなか、チームがAクラスで戦えたのは、間違いなく福田の存在が大きかった。ユニホームを脱ぐ瞬間まで「上手くなりたい」という向上心を持ち続ける男が、4連覇を目指すチームを引っ張っていく。
○橋本健吾(はしもと・けんご)1984年6月、兵庫県生まれ。報徳学園時代は「2番・左翼」として2002年に選抜優勝を経験。立命大では準硬式野球部で主将、4年時には日本代表に選出される。製薬会社を経て報知新聞社に入社しアマ野球、オリックス、阪神を担当。2018年からFull-Countに所属。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)