リーグトップの1.35、元有望株が日本で開花したワケ 課題を克服…光る高数値4.57&0.98

オリックスのアンダーソン・エスピノーザ【写真:北野正樹】
オリックスのアンダーソン・エスピノーザ【写真:北野正樹】

オリ助っ人エスピノーザはリーグ1位の防御率1.35

 オリックスの新助っ人、アンダーソン・エスピノーザ投手が圧倒的な投球を見せている。ここまで6試合に登板してパ・リーグ1位の防御率1.35。山本由伸投手、山崎福也投手が抜けた中、新たな大黒柱の1人となる可能性を示している。今回は球歴、米球界時代の成績、日米における各種指標を紹介する。(成績は5月11日時点)

 ベネズエラ出身のエスピノーザは2014年に16歳でレッドソックスと契約し、2016年途中にトレードでパドレスに移籍。MLB公式サイトが発表した2017年のプロスペクトランキングでは、チーム2位、全体25位という評価を受けていた。だが、2017年にトミー・ジョン手術を受け、4シーズンにわたって公式戦登板から遠ざかった。

 5年ぶりに復帰した2021年途中にカブスへ移籍。2022年にメジャーデビューを果たし、7登板で18回1/3を投げた。防御率は5.40ながら投球イニングを上回る奪三振数を記録。パドレスに復帰した2023年は3Aで自己最多の131回2/3を投げた。

 オリックスに入団した2024年はオープン戦で防御率0.90をマークし、開幕ローテーション入りを勝ち取った。来日初登板となった3月30日のソフトバンク戦では6回無失点で来日初白星。その後も安定した投球を続け、最初の5登板全てで6回以上を投げて1失点以下だった。

 プロデビューを果たした2015年は、ルーキーリーグで防御率0.68、奪三振率9.00。2016年には17歳の若さながら1Aで108回1/3を投げた。しかし、トミー・ジョン手術の影響で4年間実戦から離れることになり、復帰した2021年もA+で防御率5.04だった。それでも2Aへの昇格後は3試合で防御率1.35、奪三振率10.80と好成績を残した。

 だが、2022年は2Aで防御率7.11、3Aで防御率8.31と、苦しい投球が続いた。同年はMLBで奪三振率9.33とポテンシャルの一端を示したものの、2023年も3Aで防御率6.15と安定感を欠いていた。

少ない与四球…40イニングで7個

 エスピノーザの大きな特徴として、与四球が少ない点が挙げられる。40イニングで四球は7。そのうち4つは来日初登板の3月30日に記録したもの。その後の34イニングで与えた四球は3つだ。さらに、投手の制球力を表す指標「K/BB」は4.57で、一般的に優秀とされる3.50を上回っている。1イニングに出した走者の平均を示す「WHIP」は0.98。与四球の少なさに加えて、被打率も.227と優れた水準に達している。

 NPBでは抜群の制球力を発揮しているエスピノーザだが、米球界時代に真逆の傾向を示していた。2021年以降は全てのカテゴリーにおいて4点台以上の与四球率を記録しており、2022年には3Aで与四球率6.58、MLBで同7.85だった。ただし、2015年はルーキーリーグで与四球率2.03、2016年は1Aで同2.91と、トミー・ジョン手術を受ける前は高い制球力を示していた。故障を克服して自己最多の投球イニングを記録した2023年は、与四球率が4.99と前年に比べて改善傾向にあった。

 奪三振率に目を向けると、米球界時代は全てのカテゴリーで8点台以上。MLB傘下においては、力でねじ伏せる投球を持ち味としていたことがうかがえる。2022年に関しては奪三振率が8.00と、キャリアの中でも最も低い数字だった。奪三振率こそ控えめながら制球力に向上が見られた点は、NPBで残している指標の傾向にも符合する。投球スタイルのモデルチェンジが、日本球界におけるブレークにつながっていると考えられる。

 NPBへの挑戦後に課題だった制球力が劇的に改善し、投球の安定感が高まったエスピノーザ。まだ26歳という年齢を考えれば、今後さらなる成長を見せる可能性も大いにあるはず。MLBのトッププロスペクトとして将来を嘱望された右腕は、今季の要注目のトピックの一つとなりそうだ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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