森友哉が持つバットへの愛着 新人年に信じた“直感”…先輩から拝借で「これだなと」
オリックス・森友哉「ずっと同じ型のバットです」
弘法は筆を“選ぶ”ということだろうか。オリックス・森友哉捕手はプロ入り直後から11年間、同じタイプのバットを使い続けている。「これいいな、と思ったので。そこからずっと同じ型のバットです」。バットを変えない理由を屈託ない笑顔でシンプルに説明した。
相棒ともいえるバットに出会ったのは、西武にドラフト1位で入団した2014年2月の春季キャンプだった。大阪桐蔭高で1学年上の藤浪晋太郎投手とバッテリーを組み、春夏連覇を果たすなど4季連続で出場した甲子園で打率.473、5本塁打を記録。高校通算41本塁打のスラッガーも、多くの高卒ルーキーが経験するように金属バットから木製バットへの移行に際し、バット選びを模索していた。そんな時、運命的な出会いがあったという。
「キャンプで先輩の方にいろんなバットを借りて使わせていただき、これだなと」。探し求めていたのは、捕手の先輩だった藤沢亨明さん(現・西武ブルペン捕手兼スコアラー)のバットだった。「1年目なので、なんでそのバットがよかったのかはわからないんですが、自分の中でしっくりとくるなと思ったんです」と当時を振り返る。
プロが使うバットは「バット職人」と呼ばれるスペシャリストによる手作りが多いものだ。選手の要望に応じてグリップの太さや重さ、バランス、形状などが決まっていくため、木製バットに慣れない新人が理想のバットにたどり着くには時間と経験が必要になる。
高い技術力を持つからこその矜持
アドバイザリープロスタッフの森を担当するスポーツ用品メーカー、ゼット株式会社の小坂勇貴さんは「西武時代から、ずっとバットの型を変えていないと聞いています。シーズン中もバットを変える選手はいらっしゃいますが、悪い状態のときに変えたバットで打ったとしても状態がよくなるとそのバットが合わなくなったりします。森さんは、同じ型を使い続け自分の調子をバットに合わせていく感じではないでしょうか」という。
調子の波に合わせてバットを変え、一時しのぎの形でも安打を稼ぐことも結果を求められるプロとしては当然のことだが、バットを変えないのは高い技術を持ち2019年に首位打者にも輝いた矜持なのだろう。
プロ1年目のキャンプで出会った理想のバット。高卒新人として46年ぶりとなる3試合連続本塁打を放つなど、プロ生活のスタートを支えてくれた。「巡り合いは、絶対に大事だと思います」。開幕から結果が出なかった移籍2年目だが、快音も戻りつつある。ひたむきに同じバットを振り続け、迷うことなく活路を開く。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)