コロナ禍のMLB移籍「想像と全く違った」 通訳との意思疎通に苦心…山口俊が悩んだ“日米の違い”

ブルージェイズ時代の山口俊氏【写真:Getty Images】
ブルージェイズ時代の山口俊氏【写真:Getty Images】

山口俊氏は2020年にブルージェイズへ移籍もコロナ禍で「いきなり解散」

 DeNA、巨人で活躍した山口俊氏は2019年オフにポスティングシステムを利用してブルージェイズと契約した。念願のメジャー移籍を実現させるも、新型コロナウイルス感染拡大により、本拠地のカナダに入国できないなど苦労の連続。憧れの華やかな舞台は「想像とまったく違った」と振り返った。

「単純に異国の地で野球をするのにスタートからできない、そこですよね。スタートに向けて調整してきたのに、(キャンプ中に)いきなり解散になって。自分でトレーニングしておくように言われたけど、次にいつ始まるかわからない。いったん日本に帰ってきましたけど、日本だってコロナで練習する場所がない。どこで何をする、という感じ。難しかったですよね」

 2019年に巨人で最多勝、最多奪三振、最高勝率のタイトルを獲得し、心身ともに充実した状態でのメジャー挑戦となったが、コロナの影響で1年目のキャンプは中断。カナダは外国人の入国が禁止されており、山口氏は2020年3月下旬に一時帰国。大リーグの開幕が7月23日に決まったことで、同月上旬に再渡米したが、カナダと米国間は移動制限があり、ブルージェイズはニューヨーク州にある球団傘下3Aのバッファロー・バイソンズの球場を暫定本拠地としてプレーした。

「個人個人のレベルはすごく高かった。そして日本も今はそうなりつつありますけど、データ重視の野球に適応できなかった自分がいたなと思います」。米国の細かい分析データを自身に落とし込むことに苦戦した。

「例えば、自分のなかでフォークボールが1番打たれていないとします。すると8割、フォークを投げろ、となる。でも8割もフォークを投げたら、打たれる割合も増えます。ヒット数も増える。他の球種でカウントを整えて、決め球にフォークを使うから打たれていないわけで……。それを打たれていないから多投しろ、と言われても割り切れない部分がありました」。自身の思いと、チームの意図との“すれ違い”に悩まされた。

印象に残ったベテランの鼓舞する姿「これがメジャーリーグじゃないから!」

 言葉の壁も影響していたのかもしれない。通訳はメジャー移籍が決まってから募集して、契約した。「もちろん、信頼はしていましたが、長く一緒にいないと関係は深くならない。1年目の途中には、本当に自分が言っていることを全部訳してくれているのかな、と意思の疎通に苦しんだ時期もありました」と吐露した。

 コロナ禍で臨んだシーズンも「けっこうストレスでした」。異国の地でホテルの球場の往復のみ。チームメートとのコミュニケーションもほとんど図れない。試合は無観客。仕方のない状況ではあったが、プロ入り前から憧れていた華やかな世界は「想像とまったく違ったものでした」と打ち明けた。

 だからこそ当時、チームのベテラン選手が「これがメジャーリーグじゃないから! とても素晴らしい世界だから。今は我慢して頑張れ!」と仲間を鼓舞していた姿は印象に残っている。

 厳しい環境で1年目は17試合登板で2勝4敗、防御率8.06に終わり、翌2021年2月に戦力外に。ジャイアンツとマイナー契約を結び3Aサクラメントに所属したが、5試合登板で0勝3敗、防御率6.17の成績。6月3日に自由契約となると、日本球界復帰を決断した。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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