低調な阪神打線で輝く“希望” 29歳の突出した得点貢献能力…リーグ1位の「8.10」

阪神・近本光司【写真:矢口亨】
阪神・近本光司【写真:矢口亨】

光った広島投手陣の奮闘…防御率は先発がリーグ1位、救援が同2位

 5月に最もチームに貢献した選手をデータで探り出し、セイバーメトリクスの指標で「月間MVP」を選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。

 勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。

 まずは、5月のセ・リーグ6球団の月間成績を振り返る。

○広島:14勝8敗1分
得点率3.43、打率.256、OPS.646、本塁打12
失点率2.29、先発防御率2.09、QS率73.9%、救援防御率1.94

○巨人:13勝10敗1分
得点率2.25、打率.230、OPS.611、本塁打12
失点率2.35、先発防御率2.53、QS率50.0%、救援防御率1.59

○DeNA:12勝12敗
得点率3.71、打率.252、OPS.694、本塁打17
失点率3.26、先発防御率3.18、QS率75.0%、救援防御率3.00

○阪神:10勝13敗1分
得点率2.71、打率.213、OPS.573、本塁打9
失点率3.08、先発防御率2.44、QS率56.0%、救援防御率2.58

○中日:9勝13敗2分
得点率2.42、打率 .231、OPS.603、本塁打9
失点率2.91、先発防御率2.93、QS率58.3%、救援防御率2.18

○ヤクルト:7勝14敗3分
得点率4.08、打率、.215、OPS.612、本塁打18
失点率3.34、先発防御率3.26、QS率50.0%、救援防御率2.93

 5月に首位に躍り出たのは広島。特に投手陣の活躍が凄まじく、救援防御率1.94はリーグ2位、先発防御率2.09はリーグ1位だった。QS率73.9%もさることながら、HQS率43%は群を抜いて優秀である。5月の広島の先制率は47.8%ながら、先制されても45.5%は逆転勝利を収めており3連覇時代の「逆転の広島」が蘇ったようだった。

広島・小園は月間打率.368、得点圏打率.440をマーク

 そんなセ・リーグのセイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みる。打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりもどれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。セ・リーグ打者のwRAAランキングは以下の通りだった。

○近本光司(阪神):wRAA8.10、109打席、OPS.886、打率.312、本塁打3

○宮崎敏郎(DeNA):wRAA7.24、86打席、OPS.918、打率.299、本塁打3

○小園海斗(広島):wRAA6.96、96打席、OPS.888、打率.368、本塁打1

○ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト):wRAA6.75、93打席、OPS.909、打率.289、本塁打5

 上記のランキングに掲載されていないチームのwRAA上位選手は以下の通り。

○丸佳浩(広島):wRAA5.47、104打席、OPS.818、打率.314、本塁打2

○福永裕基(中日):wRAA4.60、57打席、OPS.792、打率.273、本塁打0

 5月の広島の快進撃を打撃面で支えたのは小園だ。5月は18合で4番として先発出場しているが、月間打率.368、OPS.888の高水準を保っている。得点圏打率が.440とクリーンアップとしての重責を果たしており、公式の月間MVP最有力候補と言えよう。

 だが、セイバー指標でそれ以上の貢献度を示した打者が近本である。月間OPSは小園とほぼ同等の.886だが、3盗塁など足での貢献も光る。1番打者としてチャンスメークもすれば、下位打線が作ったチャンスを確実に点数につなげる打撃は今季も健在だ。5月の阪神打線は全体的に低調ではあったが、そんなチーム状況でも大きく貢献した近本を5月のセ・リーグ月間MVP打撃部門に推薦する。

中日・高橋宏斗【写真:小林靖】
中日・高橋宏斗【写真:小林靖】

中日・小笠原&高橋宏はともにQS率100%、HQS率75%の安定感

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAを用いる。上位ランキングは以下の通りだった。

○小笠原慎之介(中日):RSAA4.75、登板4、イニング29、防御率1.24、WHIP0.90、奪三振率6.21、与四球率1.55、QS率100%、HQS率75%

○アンソニー・ケイ(DeNA):RSAA4.66、登板4、イニング27、防御率2.00、WHIP1.04、奪三振率8.33、与四球率2.33、QS率100%、HQS率25%

○高橋宏斗(中日):RSAA4.33、登板4、イニング29、防御率0.62、WHIP1.00、奪三振率7.76、与四球率3.10、QS率100%、HQS率75%

○ジェレミー・ビーズリー(阪神):RSAA3.83、登板2、イニング11、防御率0.00、WHIP0.64、奪三振率11.45、与四球率1.64、QS率50%

○森下暢仁(広島):RSAA3.75、登板4、イニング27、防御率1.00、WHIP0.81、奪三振率5.33、与四球率1.00、QS率100%、HQS率75%

 上記のランキングに掲載されていないチームのRSAA上位の選手は以下の通り。

○松本健吾(ヤクルト):RSAA3.48、登板2、イニング11回1/3、防御率3.18、WHIP0.88、奪三振率9.53、与四球率0.79、QS率50%、HQS率50%

○堀田賢慎(巨人):RSAA2.24、登板5、イニング24、防御率1.13、WHIP1.04、奪三振率3.75、与四球率2.63、QS率25%

 チームに貢献した度合いが大きかった投手は26歳の小笠原と、21歳の高橋宏である。どちらも4試合に先発登板し、QS率100%、HQS率75%を達成している。奪三振率やゴロで仕留める投球術など甲乙つけ難い活躍ぶりだったがが、四球率とポップフライ率の優秀によってRSAAは小笠原の方が上回った。よって、セイバー指標で選ぶ月間MVPに小笠原を推薦する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

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