繰り返した苦悩と挫折「何かが足りない」 育成5年目…感じ続けた同期エースとの“差”

オリックス・佐藤一磨【写真:真柴健】
オリックス・佐藤一磨【写真:真柴健】

オリックス、育成5年目の佐藤一磨「足りないところが何個あるかわからない」

 大きな目標に、少しずつ近づいてきた。オリックスの育成5年目・佐藤一磨投手は同期入団の宮城大弥投手を目標に、支配下選手登録を目指してきた。2人は2019年ドラフト1位と育成1位で入団。常に羨望の眼差しで見てきた。

 苦悩と挫折を繰り返しながら5年が経った。「宮城と比べたら足りないところが何個あるかわからないくらいですが、少しは成長できたのかなとは思います」。胸を張って言い切れる。

 佐藤は横浜隼人高からオリックスに入団。プロ4年目の昨季は2軍で8勝(3敗)を挙げ、ウエスタン・リーグの最多勝に輝いた。初めてシーズンを通して先発ローテーションを守った自信が表情にみなぎる。

 昨年までは、目標とする選手として宮城の名前は挙げなかった。宮城は1年目にウエスタン・リーグで6勝(2敗)を挙げ、シーズン終盤に1軍昇格を果たし、初勝利。2年目からは先発として勝ち星を積み上げていった同期との差は歴然としており、口に出すのもはばかられた。

「飲み込みの早い宮城に比べ、僕が同じような成績を残すためには10倍も20倍も練習してやっと追いつけるくらい。質も大事ですが、上手い人に追いつくために量をこなさないといけない。それが僕の野球人生だったんで。練習あるのみです」。練習を重ね、2軍とはいえタイトルを獲得したことで、宮城の名前も出せるようになった。

 身長190センチの長身左腕は精神的にも成長した。育成契約5年目のシーズンを前に支配下選手登録への思いは一層強くなり、焦りにも似た気持ちが芽生えたこともあった。そんな時、懇意にしている大阪市内で果物店「ふるぅつ ふぁみりー」を経営する荒山拓哉さんから「大きな目標に目を奪われがちだが、目の前の仕事をこなしていくことが大事なんだよ」とアドバイスをもらった。

「少し焦っていた時期でしたので、あの言葉に助けられました。目の前のことをしっかりとやって、1試合1試合、結果を出していくことを再認識させていただきました」

宮城の投球と自分を重ねることで求める“理想”

 野球の見方も変わってきた。「テレビで宮城の投球を見て、自分と置き換えてみるんです。配球を当てるクイズみたいなものなんですが、宮城はどんなピンチでもしっかりと狙ったところに投げ切るんです。自分ならその球で抑えきれるのかと比べています」。来たるべき1軍のマウンドを想定しているのではなく、純粋に宮城の投球と自らのボールを重ねることで理想のピッチングを追い求める。

「点を取られていないところではしっかりと締めているのですが、走者を出す内容や走者を背負ってから無駄な投球が多かったりします。完璧に抑えたという日がないのは、何かが足りないからだと思います。もっと自分に自信を持っていくしかありません」

 7日の巨人戦(東京ドーム)で先発登板した東晃平投手が支配下選手登録を掴んだのも、プロ5年目。佐藤も背番号「001」ながら東京ドームへの遠征に同行している。ずっと目標にしてきた1軍登板は目前。結果を出して“育成の星”に続きたい。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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