交流戦MVPの日ハム23歳を凌駕したDeNA大砲 パ投手陣を攻略…12球団トップの“10.77”
DeNAオースティンは交流戦で最多5発、「wRAA」もハム水谷を上回る
楽天の優勝で幕を閉じた今年のプロ野球交流戦。普段は対戦しないリーグ相手に最もチームに貢献した選手をセイバーメトリクスの指標を用いて評価し、セ・パ両リーグのMVPを選出してみる。
○パ・リーグ打者部門
打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」と、出塁率、長打率の合計である「OPS」を用いる。
・パ・リーグwRAAランキング
1位:水谷瞬(日本ハム)wRAA10.59、OPS1.159、打率.438、本塁打3、打席数70
2位:近藤健介(ソフトバンク)wRAA8.72、OPS1.058、打率.356、本塁打4、打席数71
3位:万波中正(日本ハム)wRAA7.68、OPS.972、打率.333、本塁打4、打席数78
4位:太田 椋(オリックス)wRAA5.13、OPS.793、打率.309、本塁打1、打席数74
5位:西野真弘(オリックス)wRAA4.57、OPS.959、打率 .429、本塁打0、打席数40
最もセ・リーグの投手との相性が良かったのは水谷だった。交流戦全18試合中16試合で安打を記録。打率.438は、2015年に秋山翔吾(当時西武)が記録した.432を超え、歴代最高となった。出塁率.471、OPS1.159はともに今季交流戦の1位である。特に得点圏打率は.615と驚異的で、インパクトは大きかった。
○セ・リーグ打者部門
・セ・リーグwRAAランキング
1位:オースティン(DeNA)wRAA10.77、OPS1.086、打率.338、本塁打5、打席数76
2位:ヘルナンデス(巨人)wRAA6.49、OPS.893、打率.342、本塁打3、打席数80
3位:サンタナ(ヤクルト)wRAA 5.61、OPS.915、打率.286、本塁打4、打席数72
4位:野間峻祥(広島)wRAA4.91、OPS.862、打率.324、本塁打0、打席数47
5位:山本祐大(DeNA)wRAA4.12、 OPS.928、打率.395、本塁打1、打席数51
上位3人は外国人で占められた。最もパ・リーグの投手を打ち崩したのはオースティン。交流戦5本塁打はトップ。僅差ではあるが、水谷のwRAAの値を上回ったため、セイバーメトリクスの指標で評価する交流戦打者部門MVPとしてオースティンを推挙する。
交流戦で楽天・早川は奪三振率9.78、阪神・才木は3勝無敗で防御率0.38
○パ・リーグ投手部門
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いるここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。
また、参考値として1イニングあたりに許した出塁数を示すWHIPと、与四球数に対する奪三振の割合を示すK/BBも示しておく。
・パ・リーグRSAAランキング
1位:早川隆久(楽天)RSAA5.28、防御率0.39、WHIP0.96、K/BB6.25
2位:種市篤暉(ロッテ)RSAA4.34、防御率2.14、WHIP0.95、K/BB5.20
3位:隅田知一郎(西武)RSAA3.72、防御率1.59、WHIP0.79、K/BB3.20
4位:モイネロ(ソフトバンク)RSAA3.59、防御率0.82、WHIP0.82、K/BB7.00
5位:曽谷龍平(オリックス)RSAA3.17、防御率0.00、WHIP0.85、K/9=12.46(四球0)
交流戦初優勝を飾った楽天は、今江監督も評していた通り、投手が存分に実力を発揮した。チームRSAAは12球団でトップだった。中でもエースとしての役割を示したのが早川。勝ち星は1勝だったが、QS率100%、奪三振率9.78の安定感で先発としての役割を果たした。
○セ・リーグ投手部門
・セ・リーグRSAAランキング
1位:才木浩人(阪神)RSAA4.82、防御率0.38、WHIP0.63、K/BB8.00
2位:井上温大(巨人)RSAA3.45、防御率2.20、WHIP0.98、K/BB7.50
3位:森下暢仁(広島)RSAA2.72、防御率2.25、WHIP0.85、K/BB7.50
4位:村上頌樹(阪神)RSAA2.63、防御率2.37、WHIP1.16、K/BB5.00
5位:九里亜蓮(広島)RSAA2.59、防御率0.41、WHIP0.64、K/BB3.00
交流戦3戦3勝、防御率0.38、HQS率100%と、パ・リーグの打者相手に無双投球を演じたのが才木だった。K/BBは3.5を超えると優秀と評価されるが、8.00を記録した。ゴロ率41%、ポップフライ率13%と、ボールがバットに当たってもヒット性のあたりは少なく被打率.146、被OPS.396だった。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。