自力Vの可能性消滅も“空論” 指揮官に迫られる決断…異例のゲキ「必死になろう」

オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】
オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】

8回の攻撃直前に“ゲキ”…オリックス・中嶋聡監督「何かが違うんだろうなと思います」

■ソフトバンク 5ー1 オリックス(26日・京セラドーム)

 本気だからこそ、大きな声を発した。オリックスの中嶋聡監督は26日のソフトバンク戦(京セラドーム)の8回攻撃前、一塁側ベンチでナインを集めて叫んだ。試合開始直前にナインに向かって“愛のあるエール”を送る日々だが、試合中にメンバーの前で喝を注入するのは極めて異例のことだった。

 1-5と4点を追う8回、指揮官が動いた。明らかに表情が“正気”だった。中嶋監督が“ゲキ”を飛ばすと、選手らの表情が変わった。ナインは会話の内容こそは伏せたが「必死になろう。粘りが足りない」といった真剣な言葉だった。

 指揮官は試合後「必死さと言いますかね、粘りと言いますか。あるようには見えないですよね。自分の調子が悪いとかは置いておいて、チームでなんとかするということ徹底しているはずなんですけど、それが見えないということは何かが違うんだろうなと思います……」と報道陣の前で話すワードを慎重に選んだ。

“気合注入”された打線だったが、8、9回も無得点に倒れてゲームセット。27個目のアウトを奪われた瞬間、首位・ソフトバンクとの差は15.5ゲーム差に広がった。指揮官は継投タイミングなどの戦術面について「全てを(囲み取材で)言うわけではないので、そこは答えないです」と、いつものようにキッパリ。3連覇を果たした2021年からの3年間と、何も変わりはない様子だった。

 変わったのは周囲からの“見え方”だった。主力選手が直近3年間で大幅に“入れ替わる”形となったが、首脳陣の1人は「毎年、違った(戦力の)チームですから。それはどのチームも一緒。昨年、一昨年などの過去にとらわれていては『今年』と向き合えません」と言うように、現実に目を向けていくことが1番の重要ポイントになる。

 これで再び借金5となり、今季69試合目で自力優勝の可能性が消滅した。ただ、自力優勝とはオリックスが残り全ての試合で全勝しても、ソフトバンクが直接対決以外の試合で全勝すれば順位を上回れないという非現実的な“空論”に過ぎない。指揮官も「(残り試合や優勝の可能性は)もうないんですか?」と“逆質問”するほどだった。

 計算上の事実よりも、目の前の一戦に集中する。2021年、2022年のオリックスは僅差での「大逆転優勝」を決めている。信ずるところにしか道は拓かない――。「たられば」を言っているだけでは進めない。平日の夜にも集う大勢のファンの数こそが真実。魅力あるチームが一致団結して白星を目指す。鮮やかなドラマを彩るためには“リアル”を生き抜く決断をするしかない。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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