デビュー戦は“まさかの結末”「浮足立っていた」 巨人で挫折経験…真価問われる29歳

日本ハム戦に出場した西武・松原聖弥【写真:矢口亨】
日本ハム戦に出場した西武・松原聖弥【写真:矢口亨】

西武移籍の松原は「1番・右翼」で出場…サヨナラ打と思われた打球は美技に阻まれた

■西武 2ー2 日本ハム(26日・県営大宮)

 交換トレードで巨人から西武に移籍した松原聖弥外野手が、26日に埼玉県営大宮公園野球場で行われた日本ハム戦で新天地デビュー。「1番・右翼」でスタメン出場したが、延長12回、サヨナラ打になるかと思われた打球を相手の五十幡亮汰外野手の超美技に阻まれ、試合は引き分け。松原自身は6打数無安打に終わった。「ちょっとした挫折ではくじけない。そういう部分では誰にも負けない」と語る男の真価が問われるのは、これからだ。

 一瞬垣間見えた天国から、地獄へ突き落とされた心境だったかもしれない。2-2の同点で迎えた延長12回。2死一、二塁で打席に入った松原のバットが、日本ハム8人目・山本拓実投手が投じた外角のシンカーをとらえた。飛球は前進守備の左翼手・五十幡の後方を襲い、誰もがサヨナラを確信した。

 ところが、球界屈指の走力を誇る五十幡が背中を向けたまま追走し、最後は倒れ込みながらスーパーキャッチ。ベンチを飛び出していた西武ナインは頭を抱え、二塁ベースに差し掛かろうとしていた松原は天を仰いだ。「前進守備だったので『抜けてくれ』という気持ちで走っていましたが、捕られたら一緒です。また次に、切り替えて頑張ります」。松原は試合後、無念の思いをこう絞り出した。

 今季わずか2試合の大宮開催ということもあって、スタンドは1万7903人のファンで埋まり満員札止め。背番号「35」の真新しいユニホームが土のグラウンドに映え、舞台は整っていた。ただ、雨による8分間の中断を挟んで、試合時間は4時間3分に及び、終了は午後10時11分。松原にとってはのっけから長い1日となった。

 初回先頭での第1打席は、日本ハム先発の福島蓮投手のフォークをとらえるも、痛烈な打球が野手の正面に飛び二直。第2打席は投ゴロ、第3打席は一ゴロ、第4打席は空振り三振に倒れた。第5打席は延長10回1死一、二塁の好機だったが、日本ハム6人目・生田目翼投手のフォークの前に空振り三振。松原には一打サヨナラのチャンスが2度あったわけだ。

仙台育英で甲子園出場も自身はスタンド応援→大学は4年間首都リーグ2部

「チャンスで2度回ってきましたが、浮足立っていたというか、正直言って、今日は自分のスイングがあまりできませんでした。普段通りでない感じで試合に入ってしまい、思い切ってやろうとは思っていたのですが、空回りしてしまった部分があります」と悔やむ。今季は巨人で開幕1軍を果たすも出場9試合、打率.154(13打数2安打3四球)で、4月15日以降は2軍暮らしだったとあっては、無理もないだろう。

 前日(25日)の移籍会見で、29歳は「僕は育成選手としてプロに入ったこともそうですが、高校時代もレギュラーではなかった。ちょっとした挫折ではくじけない。雑草魂というか、そういう部分では負けないと思います」と語った。実際、宮城・仙台育英高3年の夏、チームは甲子園出場を果たしたが、当時内野手だった松原はベンチ入りメンバーから漏れスタンドにいた。明星大で外野手に転向し成長したが、チームは在学4年間を通じて首都大学リーグの2部にとどまり、注目されることはなかった。

 そこから育成ドラフト5位で巨人入り。5年目の2021年には1軍で規定打席をクリアし、打率.274、12本塁打、15盗塁をマークするまでにのし上がった。翌年以降は新外国人選手の加入などで出場機会を減らしたが、1度は巨人でレギュラーの座をつかんだのだ。

 渡辺久信GM兼監督代行は松原の新天地デビュー戦を「1打席目もいい当たりだったし、最後も本当に惜しかった。結果的にヒットは出なかったですが、これから戦力になってくれると思います」と評した。松原にとってはハードラックな再スタートとなってしまったが、後々笑って振り返られるようになればいい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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