育成・芦田丈飛が“即決”したスタイルチェンジ 剛球捨てて「やり直し」…探した生き抜く道

オリックス・芦田丈飛【写真:北野正樹】
オリックス・芦田丈飛【写真:北野正樹】

オリックス・育成の芦田丈飛…投球フォーム改良で「キャッチボールの延長」

 力を抜いた投球を身につけてから奪三振が急増している。オリックスの育成ドラフト4位・芦田丈飛投手が、首を大きく振る投球フォームを改造。今では三振を奪う数が増え、安定した投球を続けている。「これまでリリースの瞬間に首を振って、がむしゃらに投げていた。それをやめたら、投球が安定してきましたね」。右腕は笑顔で新たな試みへの手応えを語った。

 芦田は英和高(千葉)、国士舘大、社会人オールフロンティアを経て独立リーグ、ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに入団。2023年は38試合に登板。最速152キロのストレートと鋭く落ちるフォークを武器に39回1/3を投げ38奪三振、防御率3.20でチームの南地区リーグ優勝に貢献した。

 オリックスに入団後、指摘されたのが首を大きく振って投げ込むフォームだった。「癖ですね。スピードを出そうと、頑張って首を振っていたんです。中垣さん(征一郎巡回ヘッドコーチ)のアドバイスで首の動きを小さくしたら、その方が、腕が振れようになったので、1回やり直してもありかなと思いました」。社会人、独立リーグを経て24歳でつかんだ育成選手。この1年で勝負をするつもりでいたが、プロの扉を押し開くためにシーズン途中のフォーム改造に迷いはなかった。

 改造後、球速は140キロ台前半まで一気に落ちてしまったが、6月12日のウエスタン・リーグ、阪神戦(鳴尾浜)では、先発し5回を90球で5者連続を含む10奪三振。3安打1四球無失点の好投を披露した。最速は143キロだったがフォーク、スライダーを丁寧に低めに集めた。球速は失っても、制球力で打者を仕留める“新境地”を開いた瞬間だった。
 
「キャッチボールの延長で投げています。バッターからしたら、メッチャ遅そうだなと思って、手元でグッとくるいう感じでなんでしょうか」。その後も好投は続き、シーズン当初に5.14あった防御率は、一時1.44にまで大きく改善された。

 7月16日のウエスタン・リーグ阪神戦(杉本商事Bs舞洲)では、先発し3回に3四球と制球を乱した後、痛打を浴びた。4回3安打3失点でマウンドを降り、防御率は2.17に上昇。しかし、3回終了後に平井正史投手コーチから「リリースポイントがいつもより高くなっている」と指摘を受け、4回は3者凡退で切り抜けるなど、修正能力の高さも見せつけた。

「スピードを出そうと思えば、また、首を振れば出せます。でも、プロ入り後のトレーニングで体も強くなったので、(球速を上げる)欲に負けないよう、やることを継続したいと思います。古田島(成龍投手)の活躍で、1軍のレベルもわかったので良い目標になります」。初登板から22試合連続無失点のプロ野球タイ記録を達成した同期入団の古田島にも刺激を受け、支配下選手登録を目指す。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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