最下位から浮上への“救世主” 115キロ巨漢ドラ1にかかる期待…4年目のブレークへ
5月に1軍昇格、7試合にスタメン出場も24打数1安打と結果を残せず
パ・リーグ最下位に低迷している西武。前半戦はチーム打率.206、195得点で、いずれも12球団ワーストとなっており、打線不振の要因があることは誰の目にも明らかだ。後半戦での奮起が期待されるのが、チームきっての長打力を誇る渡部健人内野手だ。
今季イースタン・リーグでは、チームで唯一規定打席を超えている。2軍戦出場60試合で打率.259、8本塁打、33打点、出塁率.370。長打率.454はリーグトップに立っている。「真っすぐを弾ける確率が少しずつ上がってきましたし、良い方には行っていると思います」。スピードボールへの対応を課題に挙げつつ、手応えをつかみつつある。
昨年は1軍で自己最多の57試合に出場。打率.214ながら6本塁打、25打点をマークした。しかし今季は、5月3日に1軍に昇格し7試合でスタメン出場したものの、24打数1安打(打率.042)、11三振と結果を出せず、同15日に出場選手登録を抹消されて以降、2軍暮らしが続いている。
「1軍に上がった時は何とも思わなかったのですが、チャンスを何回もいただいているのに結果を出せず、少しずつ焦ってきて……。(1軍と2軍では)ピッチャーも多少は変わりますが、最終的には気持ちなのではないかと、今は思っています。自信を持って打席に立つことができず、カウント的に追い込まれるに従って、『どうしよう……』という気持ちになって、ボール球に手を出すことが多くなりました」
2軍でも「(甘い球を)1発で仕留めることができていなかったので、しっかり(ストライク)ゾーンを描き、そこに来たら打つという意識を持つことを、ファームの方々に言われて心掛けています」と反省の言葉を並べる。
1軍の試合を「正直言って、あまり見ていない」理由
2軍にいる間、1軍の試合は「正直言って、あまり見ていないです」と複雑な心境を明かす。「もちろん、戦力にならないといけないと思っていますが、1軍の試合を見たからといって得られるものがあるとは限らない。どちらかというと、他球団の1軍の試合を見てしまいます」。チームの1軍を見れば焦りが募る上、ともかく自分自身の実力アップが先決と考えているようだ。
実際、他球団の試合からヒントを得ることも多い。「チームの中村(剛也内野手)さんもそうですが、最近はジャイアンツの岡本(和真内野手)さんを意識して見ています。技術もすごいですが、打ちそうだなという雰囲気がある。初球からどんどん振っていって1発で仕留めますし、追い込まれてからの対応もしぶといですよね」と注視している。
「本当に気持ち次第だと思っています。今までは自分で自分を苦しめていました。もちろん2軍で結果を出さないと1軍に上がれませんが、2軍でバンバン打ったから1軍でも、とはいかない。(イースタンでの)数字は特に意識せず、しっかり自分がやるべきことをやっていけば(1軍に)昇格できると信じています」
渡部は2020年ドラフト1位で桐蔭横浜大から西武に入団し、4年目。176センチ、115キロの体に人一倍のパワーを持ち、当初から中村、山川穂高内野手(現ソフトバンク)の系譜を継ぐ素材として期待されていたが、今季ほど切実にブレークを求められているシーズンはない。救世主となりうる可能性を秘めた男は「自分の気持ちっすね、本当に……」と繰り返した。
(倉林知子 / Tomoko Kurabayashi)